頼れるフル電動SUVで、心地よい山沿いドライブへ!

フォルクスワーゲン初のフル電動SUVとして誕生したID.4が、満を持して日本に上陸。最先端の機能と心地よい加速が自慢のBEVは、街だけでなく、海でも山でも頼り甲斐十分だ。

VOLKS WAGEN/ID.4

ジャケット4万3780円/レミ レリーフ(ユナイト ナイン 03・5464・9976)、フリースベスト2万6000円、キルティングパンツ2万8000円/ともにジュゲム(ヘムト PR 03・6721・0882)、パーカ1万6500円/カイメン(カイメン keimen.official.ec)、サイドゴアブーツ1万5400円/コンバースキャンピングサプライ(コンバースインフォメーションセンター 0120・819・217)、サングラス4万4000円/アイヴァン(アイヴァン 東京ギャラリー 03・3409・1972)、手に持ったボアキャップ6600円/マウンテンハードウェア(コロンビアスポーツウェアジャパン 0120・193・803)

ス〜ッと前に進んでいく、そのスムーズさがたまらない!

従来のクルマのような内燃エンジンは搭載せず、バッテリーに蓄えた電気でモーターを動かし、減速時はモーターを発電機としてエネルギー回収を行うBEV。こうしたフル電動のクルマはドライブに不向きといわれた時代もあったが、それももはや過去の話だ。ネックとされていた航続距離は格段に延び、外出先で不便さを感じることなく充電できる環境も整ってきた。加えて、フォルクスワーゲンのID.4のように、スタイルと乗り味をかなえたクルマを選べる時代になったことも歓迎すべき点だろう。5ドアハッチバックを採用したこのクロスオーバーSUVは、電池容量kWhの〝ライト〟と77kWhの〝プロ〟の2グレードから選べるのだが、後者の航続距離は618kmを実現。昨年末に先行発売されたローンチエディションのブレーキ関連を調整し、減速時のエネルギーを電力に変えるなど回生量が増えたことで、この標準版は一充電あたりの走行距離が‌57kmも延びたのだという。

先端の運転支援システムも数多く採用。車両前方の領域を監視し、ほかのクルマや歩行者との衝突を警告音と自動でのブレーキ介入で回避するプリクラッシュブレーキシステムに加え、前後方向と横方向の車両コントロールシステムを組み合わせた同一車線内全車速運転支援システムなどを標準装備。※上位グレードのプロの場合。648万8000円〜(フォルクスワーゲン カスタマーセンター 0120・993・199)
 

しかもこのクルマ、その乗り味も未体験の心地よさなのだ。最大トルクは310Nmを誇るだけだけあって、アクセルペダルを踏むとEVらしい力強い加速を味わえるのだが、その加速感はあくまでなめらか。かつてのEVのように過度にトルク感が強調されてはおらず、ス~ッと滑り出すようなマイルドな加速が楽しめる。もちろん、ドライブモードをスポーツにすると加速力は高まるのだが、それでも背中がシートにグイグイと押し付けられる感覚はなく、あくまでスムーズな疾走感なのが心地いい。トルクの安定感があるからなのか、伸びやかな走りでスピードに乗っていく印象だ。そのため、上り道では粘りのある加速力を発揮し続けることが可能。この日は、三国峠までロングドライブに繰り出したが、終始スイスイだった。

風によって形作られたようなデザインを特徴とするボディは、Cd値0.28というSUVとしては優れた空気抵抗値を誇る。オーバルシェイプのヘッドランプは、ID.シリーズに共通するデザインだ。ダウンジャケット10万7800円/タトラス(タトラス コンセプトストア 青山店 03・3407・2700)、フリースジャケット4万1250円/ナイキ ACG、スニーカー1万6500円/ナイキ スポーツウェア(ともにナイキ カスタマーサービス 0120・6453・77)、パンツ5万7200円/サイベーシックス(マスターピースショールーム 03・6407・0117)、ニット帽7150円/フラグスタフ(フラグスタフ f-lagstuf-f.com)、サングラス4万4000円/アイヴァン(アイヴァン 東京ギャラリー 03・3409・1972)、その他スタイリスト私物
 

快適さの理由はコンパクトSUVであることを感じさせない車内空間にもある。駆動用バッテリーを前後の車軸間にレイアウトすることで、4585mmの全長に対して、2770mmと長いホイールベースを確保。そこで生まれたフラットな室内空間は、大型SUVに相当する広さを誇っている。それでいて有効回転半径(車体の最も外側が描く半径)は10.2mなので、欧州の測定値ではフォルクスワーゲンで人気のコンパクトカー、ポロより小回りが効く。交通量の多い時間帯の街中での取り回しも良好だから、三国峠で夕暮れの絶景を楽しんでから帰路につけるのだ。

遊び心のある作りが、各所にちりばめられている。

ID.4に乗ってみると、なめらかかつ力強い加速に加え、近未来的な操作感にも新鮮さを感じるはずだ。まず、クルマに乗るときはキーを持っていれば自動的に解錠されるので、そのままドアを開けて運転席に座ってシートベルトを締めてブレーキペダルを踏む。するとシステムが自動的にオンに。システムを起動するスタートボタンも付いてはいるが、わざわざ押す必要はなく、システム起動後にドライブモードセレクターと呼ばれるシフトセレクターでDレンジを選択すれば、すぐに走り出すことができる。また停車する際は、走行停止後にドライブモードセレクターのPボタンを押し、ブレーキペダルから足を離すとイグニッションがオフ状態に。その後はドアを開けて降車すると着座センサーがドライバーの降車を検知し、システムが自動的にオフになる。最初は少し戸惑うかもしれないが、走り出しから降車までのスムーズさに新感覚の楽しさが詰まっており、今までとは違うワクワク感を感じずにはいられない。

ステアリングの右側にスタート &ストップボタンは一応付いているが、キーを持って運転席に座り、ブレーキを踏めば自動的にスタンバイ状態に。わざわざ押す必要もないので楽チンだ
 

ブレーキを踏むと、システムが自動的にオンに。走り終わったらPボタンを押してクルマから降りるとシステムがオフになる。走る前後の操作は内燃エンジン車とは別もののスムーズさだ。アクセルペダルには再生マーク、ブレーキペダルには一時停止マークを描くなど、デザインに遊び心もちりばめられている
 

操作性やエクステリアだけでなく、運転席まわりのデザインも無駄なくシンプルだ。エアコンなどの細かい設定は、インフォテインメント系センターディスプレイのタッチスクリーン操作で行う仕組み。その脇には操作内容やスマホのナビアプリによる案内情報の内容が映るモニターがあり、もうひとつドライバーの前に計器盤がチェックできるモニターがあるため、インパネまわりに物理的なスイッチがほとんどない設計だ。車速やバッテリー残量などの表示も、すべてセンターディスプレイに集約されている。コックピットがすっきりしていることで視界も良好に感じられ、開放感の獲得も期待できるというわけだ。

シフトセレクターは従来のようなレバー型ではなく、ステアリング側のメーターパネル右側にダイヤル式のスイッチが付いている。これを奥にひねるとD(ドライブモード)とB(回生モード)になり、手前にひねるとR(後退モード)に切り替わる。P(パーキングモード)にするときは先端を押し込めばOKだ。センターコンソールにレバーやボタンがなく、内観はすっきりとした印象だ
 

さらに積載力も申し分のない優秀さを誇る。車体中心付近にバッテリーを敷き詰めたBEV専用プラットフォームは、空間を効率よく使うことが可能。そのため後席を起こした状態で543リットルの荷室容量を確保で60:40の後席をアレンジすれば最大1575リットルまで拡張できる。後部座席に人が座ったまま中央に長尺物を積み込めるトランクスルー機構があるのも便利だ。加えてフロアボードは上下2段式で、上段にしておけば後部座席を全部倒した際にフラットなフロアになる。この状態なら場所を取りがちな普通充電用ケーブルを床下に収納しておくこともできるはずだ。ちなみにフォルクスワーゲンは、全国246のディーラーのうち、158店舗に出力90kw以上の急速充電器を年内に設置予定。加えて、高速道路のサービスエリアや他メーカーのディーラーに設置されている充電器との相互利用も可能なので、万が一の電欠を心配することなく、安心してロングドライブにも繰り出せるというわけだ。

荷室にアルミコンテナを積んでおくと、車内が散らからずに遊び道具を積みっぱなしにでき、タフな見た目が男らしい空間の演出にもひと役買ってくれる。これは老舗アルミ製品ブランド・アルポス社の定番で、スタッキング対応なのも便利。各3万1900円/パシフィックファニチャーサービス(パシフィックファニチャーサービス 03・3710・9865)

Car Spec
パワーユニット:電気モーター(交流同期電動機)
EV駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
最高出力・最大トルク:150kW・310Nm
駆動方式:RR
トランスミッション:1段固定式
乗車定員:5人
車両寸法:全長4585×全幅1850×1640mm
最小回転半径:5.4m
交流電力量消費率:139Wh/km ※WLTCモード
一充電走行距離:618km ※WLTCモード


写真/瀬田秀行 スタイリング/井上裕介 文/遠藤 匠

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