ビール、コーラなどのクラフト系飲料の人気にあやかって、ジンの人気がジワジワと上昇中。イギリスでの市場規模がウイスキーを超え、日本でも国産ブランドの数が100を超えるなど、たしかな盛り上がりをみせている。
でも、クラフトジンって、そもそも普通のジンとは何が違うんだろう。生産量や原料? それとも製造方法? そんな疑問をクラフトジン専門店のプロに、誕生の背景から自宅で飲めるオススメの銘柄まで聞いてみた!
\教えてくれたのはこの人!/
バーファンカ 店長
鈴木隼人さん(40歳)
幡ヶ谷にあるクラフトジン専門バーの店長。海外産から国産まで、あらゆる種類のクラフトジンに精通している。訪れた客のそのときの気分や味の好みをヒアリングし、オーダーメイドで至高の1杯を提供するスタイルだ
ルールに縛られず、自由な発想で製造できる。
「クラフトジンの明確な定義はありません。ただ、ジンの定義を知ることで、理解できると思います」。EUの法律ではジンの定義として以下3つの事柄が挙げられているという。1つ目がアルコール度数37.5%以上であること。2つ目が西洋ネズと呼ばれる針葉樹から採れる実(ジュニパーベリー)を使うこと。最後に香味付けの材料(ボタニカル)を使用すること。つまり、高いアルコール度数でジュニパーベリーを使用しさえすれば、材料や製法、産地に制約はない。「そうした造りやすさもあって、2000年以降に世界的な流行の兆しを見せ始めました。そのきっかけの一因が、イギリスで生まれたヘンドリックスという銘柄ですね」。1999年に誕生したこのクラフトジンは、バラとキュウリで香味を付けて、従来のジンとは異なる味わいを実現し、高い人気を得た。「日本で知られるようになったのは、2016年に発売された京都蒸溜所の季の美がきっかけでした。国内のバー業界はもちろん、海外でも高く評価されたんです。その影響もあり翌年にはほかの国内メーカーが相次いで発売したので、並行して海外の銘柄も日本の市場で注目され始めました」。しかし当時は扱う店がごくわずかで、興味を持つエンドユーザーはなかなか増えなかった。そんな状況を変える契機のひとつとなったのが、2018年から始まったジンフェスティバル 東京だ。以降、海外発祥のカルチャーに対して敏感な東京エリアに、明確なコンセプトを持ったクラフトジンの蒸留所が建ち始める。たとえば東京リバーサイド蒸溜所は、廃棄される酒粕などを再生してジン造りを行う。「東京で製造されているクラフトジンには、おもしろいものがたくさん。虎ノ門蒸溜所が造る季節のジンシリーズや、東京八王子蒸溜所のトーキョーハチオウジンなどには、ポテンシャルの高さを感じます」。製造の自由度が高いだけに、日本の職人たちによって今後も個性の強い銘柄が生まれそうな予感だ。
東京のクラフトジンを代表する1本!
おいしい割り方を知れば、家飲みはもっと楽しい時間に。
従来、日本ではジンはカクテルの材料として扱われることが多く、自宅で楽しむためのお酒として選ばれることは少なかった。しかしクラフトジンの登場により、ソーダやトニックウォーターで割るだけでおいしく飲めるという認知が広がり、家飲みでの需要が増加。バーなどの専門店のみならず、誰もが気軽に自宅で楽しめる蒸留酒となったのだ。「家で飲む際は、クラフトジン1に対して割り材を2くらいにするのがちょうどいい。やや濃いめではありますが、そのほうが香りもしっかりと立ってくれるので……。あと、飲む際はワイングラスがあるといいと思います。ボトルは冷やさず常温で保存するのがベストですね。これも理由は同じで、クラフトジンの特徴である香りを強調するため。味が薄まらないように、大きめの氷も用意しておくといいでしょう。また、従来のジンを割る際はレモンやライムを絞るのがセオリーですが、クラフトジンには必要ありません」。ほかにも、割らずにロックやストレートでおいしいジンもあるので、自分の好みを見つけるとよさそうだ。「割り方のコツを挙げるとすれば、スパイシーやウッディな風味のクラフトジンはソーダで、フルーティやフローラルなものはトニックウォーターで割ると、おいしく飲めますよ」
鈴木さんオススメの割り方その1
トニックウォーターで割るのがイチオシ!
キナの木から抽出した天然エキスの苦みと爽快感が、自宅でのおいしいジントニック作りにうってつけ。200mL 実勢価格235円 ※編集部調べ/フィーバーツリー(ウィスク・イー fevertree.jp)
鈴木さんオススメの割り方その2
ソーダで割るのがグッド!
天然の軟水を使い、ミネラルバランスに優れたソーダ。きめ細かい泡がクラフトジンの豊かな香りを後押し。200mL 実勢価格235円 ※編集部調べ/フィーバーツリー(ウィスク・イー fevertree.jp)
INFORMATION
バー ファンカ
住所:東京都渋谷区幡ヶ谷2-76 仲ビル1F
☎:03・3375・3788
営業時間:19:00~翌2:00
定休日:火曜
写真/野口 彈、松下哲也 編集・文/辻康太郎