渋谷の街から象徴でもあったHMVがなくなった2010年。その4年後にオープンしたのがレコード専門店、HMVレコードショップ 渋谷だ。現在までの間に、数多くの音楽好きが注目するストアに成長した同店が今目指す先とは?
教えてくれたのは……
ローソンエンタテインメントレコードショップ営業部
竹野智博さん
HMVレコードショップ渋谷の立ち上げを指揮した初代店長。90年代には渋谷などで開催されていたクラブイベントによく行っていたそうだ
急速なデジタル化の
反動がキテる。
2014年、渋谷にオープンしたHMVレコードショップ 渋谷。当時レコードの売り上げはジワジワと上昇している状態にはあったが、まだ一般にその人気が広まっているわけではなかった。そんな中でレコード専門店を企画しオープンに漕ぎ着けた竹野さんは、どんな考えを持っていたのだろうか? 「音楽の楽しみ方が変わったことによりCDの売り上げが落ち込んでいた中、新しいことをやる必要がありました。そこでジワジワと注目を浴び始めていたレコードに挑戦してみようと思ったんですよ。鍵となったのが中古販売。HMVの主力商品だった新品の販売とのバッティングも心配しましたが、ラインナップが充実したことで相乗効果が生まれました」。心配とは裏腹に順調な滑り出しだったが、オープン当時はまだ昔を懐かしむ音楽好きがメインの客層だったそう。「その後、さまざまなアーティストたちがアナログ盤で楽曲のリリースを積極的にし始めたんですよ。そこから若い人たちに広がっていきましたね。さらにシティポップの流行やインバウンドの影響も大きく、お客さんの数が急上昇。正直、ここまで増えるとは予想していませんでした……」
ジャンルの多様化が進み
楽しみの幅が広がった。
現在、売り上げを順調に伸ばしているHMVレコードショップ 渋谷。レコードの市場規模は10年前と比べると約10倍だという。「レコードのプレス工場もかつて国内には1社しかありませんでしたが、今ではソニーが自社工場を構えるなど、数社に増えている。もはや流行ではなく確立されたと言ってもいいかもしれないレベルですね」。さらにジャンルの広がりも見逃せないポイントだ。「以前は洋楽が多かった印象ですが、最近はJ -POPやアニメなど多種多様なレコードがリリースされている。またアナログ盤の売り上げ増加に応じて、過去にリリースされたレコードの再販や1990〜2000年代初めにCDでしかリリースされなかった楽曲やアルバムをレコードとして新たにリリースするアーティストもどんどんと増えています」。その一方で、不安材料もあるという……。「人気が高まり過ぎて、良質な中古盤の確保が難しくなりつつあります。価格もかなり上がっていますからね。東京以外のエリアでの出店も考えていますが……悩みの種ですね」。ある意味嬉しい誤算といったところか。その勢いはまだまだ増えていきそうだ。
渋谷店では
アートギャラリーも併設している。
ただ売るだけじゃない!体験型のストア展開をということで、ヒップホップやハウスといったクラブ系ミュージックを揃えているHMVレコードショップ 渋谷の2階では一角をつかってアートギャラリーを併設している。ここは気軽に入っていい、音楽とアートの融合をテーマにしたスペース。ぜひレコードを掘るついでに立ち寄ってみよう。
【SHOP INFO】
HMV record shop 渋谷
住:東京都渋谷区宇田川町36-2
Insta:@hmvrecordshop_shibuya
photo : Hideyuki Seta text : Masafumi Yasuoka