レコード好きと聞くとコアな音楽ファンのイメージがどこかあるけど、キッカケは意外と身近なところだったりする。齊藤さんもその一人。始まりはあの人気漫画だとか⁉ 僕らの周りにも思いがけないところにレコードへの扉はあるのかもしれない。
探究心と所有欲が生んだ
レコードに対する執着。
床に直置き&平積み、立てかけたものも滑り落ちてくる。まるでレコードに侵食されているような様子には、なぜか懐かしさすら感じる。「本当は厳選された10枚とかで、それについて熱く語れる、みたいなのがカッコいいと思うんですけど、欲しいものがどんどん増えちゃってついついこんな状態に……」

齊藤さんが音楽好きになったキッカケは、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』。第3部の最後に出てくるザ・ビートルズのテープが気になったそう。「それからCDでいろいろと聴くようになったけど、次第にレコードに興味が湧いてきて……。知り合いの家を訪ねたときにレコードを聴いていたんですが、その姿がなんかうらやましく思えて。本格的に集めるようになったのは2011年ごろかな」

当時は現在のようにレコードが注目されている時代ではなく、価格も良心的。コレクションを始めるにはちょうどよかったという。「たとえばヴェルヴェット・アンダーグラウンドの3枚目とか、ピンク・フロイドの1枚目。同じ作品を何枚も持っていますが、発売された国やプレスされた工場によって、デザイン、音圧、ミックスが違ったり、ボーナストラックが入っていたり。その違いを知ると実際に聴いてみたくなるし、集めたくなるんですよ」この探究心はサブスクなど、データでの音楽鑑賞では満たせない領域だ。

「やっぱり生音のよさ、モノとして所有する嬉しさがレコードにはある。かといって、この部屋の状態は本意ではないんですけどね……(笑)」

マイベストはこの1枚!
『マッカートニー(トルコ盤)』
ポール・マッカートニー

話を聞いたのは……
齋藤辰也さん
会社員・DJ
1989年生まれ。チル・ブランクヘッド名義でDJ活動に勤しむ。年に1回のDJパーティ、コーズィ・インサイドを主宰しているという
photo : Hiroki Nakayama(IL NIDO.STUDIO), Tomoo Shoju(BOIL), Yuya Yoshimoto text : Shuhei Sato edit&text : Yuta Yagi