【アノ映画のファッションに憧れて。】映画『スケアクロウ』のCPOシャツ。

映画には真似したくなるファッションというものが存在する。それは俳優の持つカッコよさだけでなく、役柄の雰囲気など、いろいろなものが絡んでそう思うはずだ。今回は、最新映画ではなく、ちょっと昔の映画『スケアクロウ』に注目して、CPOシャツを使ったスタイルについて見ていこう。

 


1970年代において、名俳優〝アル・パチーノ〟はアメリカ軍関連のアイテムを映画で身につけることが多く、ある種のファッション・アイコンだった。もちろん現在の彼とはかけ離れたイメージだが、名作『セルピコ』(1973年)の時と同じく、『スケアクロウ』(1973年)でもアル・パチーノはアメリカ海軍の常用アイテムを上手に着こなして現れる。何しろ役柄が過去5年間船上で過ごしたことがある人物という設定なのだから、着こなし上手なのは理にかなっているのだ。

 

『スケアクロウ』とは?

こちらは、南カリフォルニアの路上で出会った男2人がアメリカ大陸の南西部に位置する街、ピッツバーグに向けて旅をする話。6年の刑期を終えて出所してきたマックス(ジーン・ハックマン)の目標は、ピッツバーグで洗車場をはじめること。一方で、長い船乗り生活を終えたライオン(アル・パチーノ)はピッツバーグを経由してかつて一度も会ったことがない我が子に会うためデトロイトを目指していた。


マックスもライオンも、路上生活に耐えられる汚れが目立たないダークで強靭なレイヤードスタイルが身についている。マックスがバーシティセーター、花柄のスポーツシャツ、チェックのフランネルシャツ等を頻々に取っ替え引っ替えしているのとは対照的に、ライオンはネイビーにインスパイアされたニットキャップ、CPOシャツ、シャンブレーのワークシャツを常備服にしている。頻繁に着替えるのがいいのか、同じような服でまとめてこだわりをアピールするか、2人を比較するとカジュアルウェアのあるべき着方が見えてくるかもしれない。

ライオンのワードローブで注目したいのは〝CPOシャツ〟だ。海軍仕様であることから、第二次世界大戦中に艦上で海兵隊員が着ていた分厚いフランネルシャツがオリジナルとなっており、色は濃紺、6つボタンの前立て、1つボタンのカフス、胸元のパッチポケットが特徴だ。CPOシャツは戦後、海兵隊OBたちが私生活でも着続けたため、人気が再燃。〝CPOシャツはシャツジャケットの真髄〟と評するファッションコラムが登場した。それによると、CPOシャツの人気は戦後数十年で高まり、1960年代から70年代にかけてピークを迎えたとされている。まさに、映画『スケアクロウ』の公開時期とぴったり重なるわけだ。

一方、ライオンはCPOシャツの下にマリンブルーのワークシャツや薄手のシャンブレーシャツを合わせている。また、シャツの上にはボートネックやラグランスリーブの紺のセーターを着込み、茶色のコーデュロイパンツをはいていることもある。それら何気ない路上生活者スタイルが、よく見るとめちゃくちゃオシャレに見えるのは、若き日のアル・パチーノがかなりの着こなし上手だったから。ちなみに、アル・パチーノとハックマンはこのスタイルでサンフランシスコの路上に立ち、物乞いのポーズをとってメソッド演技のヒントにしたのだとか。それこそ、服と演技が連動している証となる。

 

 


『スケアクロウ』

製作年/1973年 監督/ジェリー・シャッツバーグ 脚本/ギャリー・マイケル・ホワイト 出演/ジーン・ハックマン、アル・パチーノ、ドロシー・トリスタン、アン・ウェッジワース、リチャード・リンチ


※Safari Onlineの転載記事です。オリジナル記事はこちらから。
safarilounge.jp/online/culture/detail.php?id=16481&p=1

文=清藤秀人 photo by AFLO

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