映画の歴史を変えるような人気作品は、続編、シリーズ化となるケースが多い。そしてさらなる傑作が誕生することもあれば、1作目の鮮烈な記憶を打ち消せないパターンも目にしてきた。『エイリアン』は、原点となった1979年の1作目が、その後のSFホラーへの影響も含めて後者の傾向が強い。しかし今回の新作は、原点を愛した人をむしろ満足させている!
この『エイリアン:ロムルス』は、2142年が舞台。『エイリアン』1作目が2122年なので、その20年後。つまり正統な“続きのストーリー”だ(『エイリアン2』は2144年だった)。とは言っても、あのリプリーらは登場しないので、新たなドラマが展開。つまり初心者にも入り込みやすい設定である。人類の植民地となった星で、過酷な生活を強いられていた若者たちが、漂流する宇宙ステーションを乗っ取り、脱走する計画に着手。しかしそこで待っていた“何か”が、想像を絶する攻撃を仕掛けてきた……。今から約100年後、ディストピアと化した風景。主人公が弟として見守るアンドロイド。冷凍睡眠装置での惑星旅行。さまざまな未来のエレメントが興奮を高め、エイリアンの“進化”に衝撃を受けるという、期待に存分に応える仕上がりになっている。
1作目のリドリー・スコット監督は、シリーズ2〜4作目はノータッチだった。その後、自ら監督した2作は前日譚。今回は製作に加わり、1作目のムードを復活させる役割を果たしている。監督を任されたのは、フェデ・アルバレス。『ドント・ブリーズ』で、密室での最強盲目老人×若者たちの闘いを描ききった才能は、今回、宇宙ステーションという閉鎖空間バトルで完璧に生かされた。宇宙空間ならではのユニークな演出も見もの。主演のケイリー・スピーニーは、エルヴィス・プレスリーの妻を名演した『プリシラ』、日本は10月公開の問題作にしてアクション大作の『シビル・ウォー アメリカ最後の日』と、キャリア絶好調。本作で“旬”のニュースターであることを実感できるだろう。そして1作目を愛した人は、できればこの記事以上の情報を入れずに映画館へ足を運んでほしい。いくつものサプライズに歓喜できるはずだから!
製作/リドリー・スコット 監督/フェデ・アルバレス 出演/ケイリー・スピーニー、デヴィッド・ジョンソン、アーチー・ルノー、イザベラ・メルセード 配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
※Safari Onlineの転載記事です。オリジナル記事はこちらから。
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文/斉藤博昭
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