グッと春気分をアゲる曲。

陽だまりの季節は、外を歩くだけでも気持ちがいい。イヤホンを耳に付けて、春ソングを流せば高揚感で思わず浮足立ってしまう。
そこで、アクティブ派のミュージシャンと俳優に〝春気分をアゲる曲〟を聞いてみた。自然と音楽を愛する2人はどんなテイストの曲を選ぶのだろうか?

モン吉/アーティスト

東京都八王子市出身。ファンキーモンキーベイビーズ解散後、2016年よりソロ活動を始める。趣味はキャンプと焚火

第一位「八王子少年~春よ、来い~feat.リョージ」/リトル

レーベル:ジモト レコーズ

リトル主宰のレーベルから昨年リリースされた配信限定のシングル楽曲。1994年に発表された配信限定のシングル楽曲。1994年に発表された松任谷由実の「春よ、来い」をサンプリングし、家族への不変の愛を綴った感動曲に仕上がっている。「リトルさんの家族への思いを綴ったリリックにも心動かされました」


地元・八王子の景色を描いた名曲。

 僕にとって❝春❞といえば水色のイメージ。青空のような爽やかさとか軽やかさを想像しますね。「八王子少年~春よ、来い~」は、まさにそのイメージにぴったりの1曲と言えるのではないでしょうか。しかも、キック・ザ・カン・クルーのリトルさんを筆頭に、フィーチャリングされているケツメイシのリョージさん、さらにサンプリングされている「春よ、来い」を作られた松任谷由実さん、全員八王子の方々が、それぞれの春の風景を思い浮かべながら完成させた楽曲。オリジナル楽曲のよさを生かしながらも、リリックに関しては、リトルさんがお父様を亡くされた後に制作されたものらしく、家族への深い愛情を感じられる曲。そこに、八王子で暮らしたことのある人だからこそ作り出せる情緒が、プラスされていると思いました。
 八王子は都心から40分程度しか離れていないのに、少し歩くと心を動かされるような自然の風景が広がっていて、その雰囲気が好きで僕もずっと過ごしているのですが、この曲を聴いて街を散策すると、浅川の桜並木など、軽やかな春の色がより鮮やかに心に響くような気がします。僕が選ぶ春ソングナンバー1ですね。

第二位 「好きだから」/ウミ

収録アルバム:「ラブ・ランゲージ」
レーベル:ソニーミュージックレーベルズ

カリフォルニアを拠点に活動するネオ・ソウル系シンガーソングライターが一昨年発表した楽曲。配信限定のアルバム内に収録されている。「ちょっとたどたどしい雰囲気のヴォーカルが、フワフワした印象を与えて、それが春の軽やかさに通じる部分があるのかもしれませんね」

洋・邦をミックスした新感覚の片思いソング。

 動画サイトをチェックしていたら、おすすめリストに作品が挙がっていて、それをチェックして以降注目しているアメリカのシンガーソングライターです。彼女のお母さんは日本人らしく、そのおかげでほかの洋楽よりも耳になじみます。でも、日本のポップスにはない表現力もあって、そのほどよいバランス感覚がほかの音楽にはないものを感じました。また、とてもスキルが高いんですけど、どこか拙さを感じさせるヴォーカルもミステリアスな雰囲気があって、そこからも個性や魅力を感じました。ウミさんはとても好きなアーティストの1人ですね。

 この楽曲は、現段階で彼女にとって唯一の日本語曲だと思われます。そのせいか、ローファイなトラックなんですけど、ほかと比べてとても聴きやすかったですね。また、片思いを綴った歌詞の内容に関しても、日本人の感覚に近いものを感じました。それゆえ、聴いていて疲れないというか、リラックスして耳を傾けることができる。この軽やかさは❝春❞の雰囲気に通ずるものがあると思いました。

 付き合い始めのカップルが部屋でこれを流していたら、さりげなくお互いの距離を縮めてくれて、いいムードを作ってくれそうな効果のある1曲だと思いますよ。

第三位「ウォーターボーイ」/トビ・ルー

収録アルバム:「ライブ オン アイス」(輸入盤)

ナイジェリア生まれ、シカゴ育ちのラッパーが2019年にリリースしたアルバムに収録の楽曲。流麗なグルーヴに思わずカラダが揺れるナンバーだ。「普段ヒップホップを聴かない人でも、心地よく聴ける1曲なのではないかと思います」

最先端の❝揺れ❞が心地よい春を運ぶ。

 ファンキーモンキーベイビーズ解散以降は、あまり最新の音楽をチェックせず、自然と自分の耳に入る音だけを聴いていることが多かったのですが、最近になってそれではいけないと感じるようになって、いろんな音楽をチェックしているなかで出会ったのが、このシカゴ拠点のラッパー。彼のラップは言葉をまくし立てるようなストロングスタイルとは異なり、もっとメロディアスで叙情的な雰囲気があって、とても聴きやすいなと思いました。

 そのなかでも、この楽曲は約2年前のリリースなのですが、現代のローファイなヒップホップのムードを先取りしているような仕上がりになっていて、とてもクールだなと思いました。でも全体的に爽快感があって、散歩や移動の際に聴いていたらとても心地よくなれると思います。特に、電車に乗りながら聴いているとビートの揺れと連動して、ほかにはない春を感じてもらえるのでは。

桐山 漣/俳優

神奈川県出身。1985年2月2日生まれ。ヒラタオフィス所属の注目の俳優。プライベートではキャンプなどを楽しむアウトドア派で、小型二級船舶免許も取得。特技はベース。

第一位「アバウト・ア・ロックンロール・バンド」/ザ・ピロウズ

収録アルバム:『アバウト・ア・ロックンロール・バンド』
レーベル:デリシャス レコード

1989年代に結成した、山中さわお率いる日本のロックバンドの2014年発表曲。「歌詞にある❝流れ星❞と❝流れない星❞の対比が僕にとっては成功する人とそうでない人とのちがいのように響きました」

現在と未来の自分の心を揺さぶるロック。

 ザ・ピロウズの楽曲をちゃんと聴くようになったのは去年くらいからなんですけど、そのなかでも特にお気に入りなのがこのナンバー。楽曲を制作されたフロントマンである山中さんが音楽と出会い、さまざまな試練を乗り越えながら、30年にわたるキャリアを続けていらっしゃるのがわかる内容になっていると思います。

 特に好きなのは、サビのメジャーコードのEからG#mに変わる部分。アップテンポで爽快なサビの途中でマイナーコードが入ることで憂いが出てそれが切なくも最高にカッコよく心地いいです。曲の中に光と影を感じることができました。

 実は僕もミュージシャンを志していた時期がありましたが、役者になることを決め、今もずっと続けることができている。この楽曲では、その道のりを振り返ることができると同時に、改めて自分が役者を志した当時の思い、そして現在の立ち位置について考えるきっかけも与えてくれました。

 僕にとって❝春❞は、新しいことがスタートする季節という印象が強い。この楽曲には、また気を引き締めて新たなことに挑戦したくなる、心を高ぶらせてくれる効果があると思います。

第二位「セミ・チャームド・ライフ」/サード・アイ・ブラインド

収録アルバム:『ベスト・オブ・サード・アイ・ブラインド』
レーベル:ワーナー ミュージック

1990年代よりカリフォルニアを拠点に活動し、日本でも熱狂的なファンを持つバンドが97年にリリースした代表曲のひとつ。「心を解放させ、晴れやかにさせてくれる効果を与える楽曲だと思います」

冒頭から❝春❞満載で多感な90年代を象徴。

 僕にとって1990年代は、中高生の多感な時期を過ごし、そこでさまざまなものを吸収できた時代でした。だから当時聴いていた音楽はいまだに耳にすることが多く、また現代でも飽きない要素がたくさんあると思っています。

 そのころから活躍しているサード・アイ・ブラインドの楽曲は、当時TV番組のサウンドトラックやBGMによく使用されていて、耳に残っていたのがきっかけになって好きになったもの。イントロのギターから❝春❞が漂ってくるというか。冬の寒い時期が終わり、洋服も徐々に薄くなっていくとともに、気分も軽やかになっていく感じがします。また、その後に続くコーラスやラップのパートも春の気分を盛り上げてくれますね。歌詞に関しては品のいい生活を送っていそうな人でも、実は下品なことをやっているとか。恋愛や社会事情も絡め、当時の雰囲気をカラッと赤裸々に伝えている。その潔い表現方法にカッコよさを感じました。

 また、僕は洋服やクルマの延長から古きよきカルチャーが大好きなんです。なのでそういう雰囲気が曲全体に感じられるところも好きなポイントになっています。

第三位「(キャント リメンバー)ハウ ウィー ユース トゥ ビー 」/エルレガーデン

過去は振り返らない。新しい季節へ導く曲。

 僕が役者を志す前は、バンドでベースを弾いていたことがあるんですけど、その影響を与えられた存在のひとつがエルレガーデンだったんです。どの楽曲もすばらしいので1曲を選ぶのはとても困りましたが、これだけはどんな状況でも最後まで通して聴いてしまうほど好きなナンバーなんです。

 特に好きなのは、歌詞。恋愛がテーマになっていると思うんですが、以前付き合っていたパートナーからヨリを戻したいと言われるけれど、過去がどうだったのか思い出せないという心境を綴った内容だと感じました。そこからは、ソングライターでフロントマンでもある細美武士さんの繊細さ、もしくは男の弱さを感じることができて、強く心を動かされましたね。

 ただ、とてもセンシティブな歌詞を綴っている一方で、サウンドに関しては疾走感にあふれていて、そこからはダークな気持ちを吹き飛ばして、新しい世界や季節へ自分を導いてくれるようなエネルギーを感じられます。さまざまな出会いや別れがあり、1年で一番景色が変わるこの時期にぴったりなナンバーなのかなって思います。これからもずっと聴き続けたい1曲ですね。

Category記事カテゴリ

TOP