クラシックなアメ車の魅力を、300台以上のクルマを乗り継いできたIKURAさん。そんな彼のメガネに叶うさまざまなヴィンテージカーを紹介。今回は思わず手に入れたよいうホットロッドと呼ばれるカスタムカー。果たしてどんなクルマなのか?
今回のヴィンテージカーはこちら!
1932年式 FORD/DEUCE COUPE
フォード/デュース クーペ
まさかコレを所有する日が
来るなんてと本人も驚き!
「いやぁ、まさかこのクルマに手を出すとはねぇ〜。自分でも意外だったよ」と語るIKURAさんが乗って現れたのは、1932年式のフォード デュース クーペ。知人が仕上げた1台を、なんとこのたび譲り受けたとか。量産化に成功し、アメリカ国民の足として広く普及したT型フォードを祖とするこのクルマ。その後、A型、B型と進化するが、このデュース クーペはB型となる。

初のV8エンジンを搭載した同モデルは、各年式の中でもとりわけスタイリングの評価が高く、ホットロッド愛好家の中でも垂涎の存在となっている。「この手のクルマは、カスタムするのが前提。だからオーナーの好みがモロに反映されるんだよね。で、このクルマを見た時、仕上がりの美しさに感嘆したね。正直今まで興味が湧いたことがなかったけど、急に欲しくなっちゃった(笑)」。特にワンオフで作られたグリルの美しさにひかれたとか。1932年型のデュース クーペは1年間しか製造されなかったとあって、レア度も高い。「だからこそ、結構なお値段したけどね(笑)。ちょっとしたマンションが買えるぐらいかな。でも前オーナーのご好意で、お買い得過ぎる価格で譲ってもらったけど」。
もともとこのクルマが製造されたのは1990年代。内装などに当時の感覚が垣間見られるが、ここからIKURAさん流に手を加える予定。「エアコンを付けたいよね。いざ走り出すとヤンチャなんだけど、ちゃんと日常の足としても乗りたいからさ」。


長いアメ車歴の中でも
初乗りな理由とは?
デュース クーペを購入した理由は仕上がりの美しさ以外にもある。「昨年亡くなった父親の生まれ年が実は1932年なんだよ。この1台と出合った時、なんだか父親がクルマになって帰ってきた気がしてね……。だからパパデュースって名付けちゃった(笑)」。そんな思い入れから、長く乗っていきたいと語る。

年齢やライフスタイルにもマッチしているとあって、これから先、長い付き合いになりそうだ。「たとえば最新のロールスロイスの隣に並んだって全然見劣りしないでしょ? むしろコッチの方が格上に見えるぐらい。いかにもホットロッドに仕上げる人も多いけど、これは大人なしっとり顔に仕上がっている。エレガントだよ。でも、いざアクセル踏めばスーパーチャージャーでとんでもなく加速してくれる。その両立がイイんだよね」。唯一の難点は車内が狭いところ。「女の子とアレコレはしづらいなぁ(笑)。いや待てよ、狭い分密着できるって考え方も……。ベンチシートだしね(笑)」と、父親との感傷的なエピソードとは真逆な、いつものエロトークを始めるIKURAさん。「でも若い女の子にモテるクルマかどうかは微妙かな〜。ある程度年齢を重ねた熟女の方がこの魅力はわかってもらえるかも……」。何百台ものアメ車を乗り継いできたIKURAさんがたどり着いたデュース クーペは、確かに円熟した魅力を備えている。

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ホットロッド
1920~30年代のフォードT型、A型、B型をベースとしたカスタムカーのこと。ドラッグレース仕様や街乗り仕様など、いろんなスタイルが存在する。この1台は走りとラグジュアリーを両立するストリートロッドに分類されるそうだ。
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Profile: IKURA これまで300台以上のクルマを乗り継いできた生粋のカーマニア。日本最大級のアメリカンカスタムカルチャーの祭典「アメフェス」の主催者でもある。そのほか、ミュージシャンやタレントとしても活躍している HP:ikura61official.com/ |
photo : Hideyuki Seta text : Masafumi Yasuoka