クラシックなアメ車の魅力を、これまで400台以上のアメ車を乗り継いできたIKURAさんがお届けする当連載。今回は走りも楽しめつつ大人な上質感も感じる、高級スポーツセダンの代名詞、マーキュリー クーガー68年式が登場だ。
走りも高級感も最高! ナイスミドルカラー。
「やっぱりいいよねぇ。マーキューリー クーガーの1968年型は、昔からずっと好きだね」と語るIKURAさんだが、意外にも過去所有したことはないとか。
「同年式のサンダーバードは持ってたけどね。いわゆるスポーツセダンだけど、70年代に入るとデザインがガラッと変わっちゃうから、まあ、60年代アメ車の最終形ってヤツかな」。IKURAさんが考えるその魅力は、走りを十分に楽しめながらもマスタングのようにいかにもマッスルカーな見た目じゃないこと。
「兄弟車のマスタングと比べると、大人な雰囲気だよね。若いころはケツを上げてぶっといタイヤを履かせたマッスルカーがカッコいいと思ってたけど、オヤジになるとヤンチャ過ぎる。その点、このクルマはそんなイケイケのチャンネーって感じじゃなく、小股の切れ上がった30代ぐらいのイイ女って感じ。実はオレら世代のオヤジたちが、今こぞってこの年代くらいのアメ車に乗り換えてんだよ。そろそろ落ち着いて走りたいってね」。
マーキューリー クーガーの初代は1966年に誕生。マスタングの兄弟車だが上級ブランドに位置付けられており、よって内装も豪華。ホイールベースがマスタングより長めなロングノーズとあって、ホイルスピンするほどの馬力がありながらしっとりとした走りも楽しめる。
「このバランスが秀逸。内装もカッコいいし、マーキューリー クーガーに乗るならやっぱりオリジナルにこだわりたいなぁ。これ、エンジンは302でしょ? オレぐらいになるとボンネット開けなくてもわかっちゃうから。女の子のブラサイズも、服の上から見ただけでわかっちゃうしね(笑)。あと車高も下げてるよね。あくまでワルい感じをにおわせているのも、いいよねぇ〜」
細部に至るまで上質だからデートにも最適。
マーキュリー クーガーのスタイリングにおいて、IKURAさんが最も注目するのがテールランプだ。「このクロムメッキされた縦スリットがたまんないよね。これ越しに光るテールランプが、まぁワルいのなんのって(笑)。やっぱクルマもオンナもケツがたまんないのが1番乗ってて気持ちいいよ(笑)」。
確かに、フォードにおける上級ブランドらしく細部まで凝った作りになっているのは実に魅力的。フロントグリルとヘッドランプも、同じデザインを採用している。「ランプカバーはエンジンの吸気を利用したバキューム式で開閉するんだけど、たまに信号待ちしてる間にちょっとだけ開いて半目になる時があるんだよ。それがなんとも間抜けヅラでね(笑)。まぁ、それも愛嬌だけど」。
開閉式のリトラクタブルヘッドライトが盛んに採用されたのも、1960年代のアメ車の特徴だ。そんな発売当時は為替レートが1ドル360円ほど。同車はその時代に日本では500万円ほどで販売されていたのだとか。「家が買えちゃうよね。それだけ高級車という位置付けだったってことだよ。そのころの日本は、高度経済成長期の真っ只中。当時の成金が、こういうクルマを欲しがったんだよ」。
さらにボディカラーも見どころ。「独特な色だなぁ。アメ車だけど抹茶ラテみたい(笑)。20代だったら絶対に選ばない色だよ。でも今見ると落ち着いていて、すごくいいよね」。
アラウンドʼ70sのアメ車といえば、マッスルカーとセダンの端境期。そのミックスされた感じが、魅力に奥行きを与えている。「70年代になるとサイズが巨大化するけど、この年代頃なら現実的に都内で乗り回せるものが多い。マーキュリー クーガーなら、デートにも安心して乗っていけちゃうんじゃない?」
Profile: IKURA これまでに400台以上のクルマを乗り継いできたカーマニア。日本最大級のアメ車・カスタムカー・ビックバイクの祭典“アメフェス”の主催者でもある。今年は7月28日に開催予定だ。ミュージシャンやタレントとしても活躍中。HP:ikura61official.com/ |