“マイケル・ジョーダン”の活躍とともに伝説的存在となったエア ジョーダンは、初期モデルのリリースから現在に至るまで、新作やコラボで僕らを魅了し続ける。そんな、スポーツ、音楽、ファッションのカルチャーを大きく変えた歴代シリーズを撮りおろしで最新作まで一挙に見られるのはここだけ!?
まずはエア ジョーダンの歴史を総ざらい!
マイケル・ジョーダンとナイキが契約を結び、シカゴ・ブルズ入団初年度から彼が愛用してきたシグネチャーモデルがナイキ エア ジョーダン。個人名を冠したシリーズのネーミングも過去に例のない快挙であり、後に歴史遺産的スニーカーコレクションとなっていく理由もうなずける。ナイキにとって異例づくしのエポックメイキングな1足であった。 NBAでは白地のシューズ着用が規則だった当時において初代AJ1の黒赤は明らかな異端児であり、違反金を肩代わりするというナイキのプロモーションはあまりにも有名。ブランドとしての反骨精神と新たなムーブメントを生み出す強い意志が感じられた。初代の大成功に比べ、2代目のセールスは振るわなかったが、ナイキは新たな一手としてAJ3から、“天才シューズデザイナー”として名を馳せるティンカー・ハットフィールド起用する。“彼の家を建てる”という意気込みで面談を重ね、ティンカーはシリーズに新たな道を示すデザイン革命を起こした。おなじみのジャンプマンもここから始まる。 彼のクリエイティビティの高さに魅了されたジョーダンは、にわかに浮上していた移籍話を一蹴し、ナイキとの契約更新を決める。順調に人気を高めていったシリーズはAJ5でピークに達し、強盗事件も発生するほどの社会現象となっていった。ジョーダン自身もこの時期からどんどん調子を上げていき、翌年からの快進撃はすさまじい。バルセロナ五輪の優勝も挟みつつ、NBAの歴史において、たった5チームしか成し遂げていないスリーピート(3連覇)を達成。そのうちの2回はマイケル・ジョーダン率いる90年代のシカゴ・ブルズが達成し、黄金期と呼ばれる。エア ジョーダン 12のなかでも名作と謳われる、通称タクシー。2021年に復刻され、ファンの間で話題に。
90年代初期のテクノロジーを凝縮しながら順調に進化していったシリーズだが、ジョーダンは93年にNBA引退を発表。他界した父の意志を継ぎ野球選手に転身したことで、AJ9がコートで着用されることはなかった。しかし94年にまたNBAに復帰すると、10周年のAJ10で注目を集め、続くAJ11ではまた暴動が起きるほどの過熱ぶり。黄金期第2章の幕開けを飾る。1度目の引退から復帰し、衰えることのない実力を示した96~98年には、なんと2回目のスリーピートを達成。AJ14までがブルズ時代最後の着用モデルとなる。その後もしばらく現役生活を続けるも、プレーに全盛期の勢いは見られなかったが、それでもエア ジョーダンは開発し続けられた。近年では、選手ファーストのシューズを開発する一方、ハイブランドとのコラボで世界中を驚かせる。ファッションのみにとどまらないその影響は、トラヴィス・スコットやビリー・アイリッシュといった名だたるアーティストとの共作を見ても一目瞭然。常に愛されているのは、いつまでも技術革新、デザインの改良を貪欲に続けるナイキの姿勢によるものだろうか。1980年代のエア ジョーダン
エア ジョーダン 1(1985年)
登場以来、どの時代でも愛され、多くの逸話を残す銘品。外側に大きくスウッシュが入るモデルは現在まででこれのみであり、特にオリジナルモデルのデザイン、配色は後世のファッションシーンにも影響を及ぼしている。エア ジョーダン 2(1987年)
2作目にしてデザインを一新し、高級志向にシフト。ヘビ柄のエンボス加工が施されたアッパーは敢えてスウッシュが排除され、シュータンに大きくウィングロゴを配置した。シリーズ唯一のイタリア製となっている。エア ジョーダン 3(1988年)
初代エア マックスを手がけた天才デザイナーのティンカー・ハットフィールドを迎えたことで、ジョーダンはナイキとの契約更新を決意。3/4カットを初採用し、ウィングマークからジャンプマンロゴを新アイコンに。エア ジョーダン 4(1989年)
軽量シリーズ“フライト”の最高峰に位置づけられた今作。シュータンには、AJシリーズで唯一“フライト”ロゴが添えられている。3/4カットにアンクルスタビライザーやラバーメッシュ等の機能パーツが採用された。1990年代のエア ジョーダン
エア ジョーダン 5(1990年)
第2次世界大戦当時のアメリカ軍の戦闘機“P-51”にインスパイアされたモデル。近未来的なクリアラバーや背番号23のナンバリングが人気を決定付け、AJ5を巡り殺人事件まで発生するという社会現象を巻き起こした。エア ジョーダン 6(1991年)
ブルズ入団7年目にして悲願の初優勝を遂げたシーズンを支えたAJ6。ここから快進撃が始まる。マンガ『スラムダンク』の桜木花道が着用したことからも人気が高い。ビジブル エアを搭載した最後のエア ジョーダン。エア ジョーダン 7(1992年)
バルセロナ五輪開催年に発表。アメリカ代表のドリームチームを率いて金メダルを獲得し、ブルズはNBA連覇を果たす。大活躍した彼の求める素足感覚を追求。ビジブル エアを封印しエア ハラチシステムを採用した。エア ジョーダン 8(1993年)
1993年のオールスターでデビュー。アスリートの足を交差で固定するテーピングから着想を得たクロスベルトがデザインの最大の特徴。シュータンのパイルロゴ、サイドのタイガー柄など、斬新なディテールが一部では過剰であるとされ賛否両論があった1足。エア ジョーダン 9(1993年)
93年にバスケットボール引退を表明し、メジャーリーグベースボールに挑戦したジョーダン。そのためAJ9は、彼がNBA のコートで着用していない初のモデルとなった。代わりに世界45足限定発売の野球用スパイクに変更された特別仕様モデルは本人も着用した。エア ジョーダン 10(1994年)
ジョーダンの引退&10作目の周年記念というメモリアルモデル。前作のデザインコンセプトを踏襲しながら、アウトソールの10本のストライプに、85年新人王、86年の63得点など、85~93年の栄光の記録が記されている。引退後の94年はビヨンドと刻まれた。エア ジョーダン 11(1995年)
本人のリクエストからフォーマルシューズのようなシンプルなデザインのモデルに。映画に出演した際、着用した黒青の通称は作品タイトルの『スペース・ジャム』。現役復帰当初の背番号45をすぐ23に戻したことで幻のコレクターアイテムも生まれた。エア ジョーダン 12(1997年)
アッパーは1枚革に放射状のステッチ、シューレースフックは初となるメタル仕様。高級感あふれるデザインでありながら初めてズーム エアを採用するなど、機能面とのバランスが取れていることで、プレーヤーたちからも高い評価を集める。実力派の1足だ。エア ジョーダン 13(1998年)
ブラックパンサーをトータルデザインのモチーフに起用したラグジュアリーなジョーダン。 球を想起させるアウトソールや、暗闇に光るヒョウの目のパーツなどがみられる。翌年に2度目の現役引退を宣言し、ブルズ時代最後のシグネチャーモデルとなった。エア ジョーダン 14(1998年)
愛車フェラーリ 550マラネロがモチーフとなった1足。実は本人が試合で着用したのは1試合のみ。それも2度目の3連覇を達成した同年のNBAファイナル第6戦。優勝の瞬間に立ち会った黒赤はラストショットと呼ばれ一夜にして伝説のシューズになる。エア ジョーダン 15(1999年)
2度目の引退後リリースされた同作は、AJ5以来のアメリカの戦闘機モチーフ。ロケットエンジンを搭載した高高度極超音速実験機、X-15からインスパイアされている。かなり奇抜なルックスだが、ビリー・アイリッシュとコラボしたことで再注目を集めた。2000年代のエア ジョーダン
エア ジョーダン 16(2001年)
エア モア アップテンポなどを手掛けたウィルソン・スミスがデザインを担当。ジョーダンが2度目の復帰を果たした際に着用しており、アッパーのカバーは取り外しが可能。カバーを外すと、AJ5とAJ11よりインスピレーションを受け、作られているモデルだとわかる。エア ジョーダン 17(2002年)
ジョーダンが復帰したのがワシントン・ウィザーズ。そのチームカラーを反映させ、白と青を使用。デザインのテーマはジャズで、即興演奏と彼のプレーの即興性をイメージ。パッケージは旅立つジャズマンをイメージし、付属CDに製品説明が入るなどギミックが効いている。エア ジョーダン 18(2003年)
当時の愛車、ランボルギーニ ムルシエラゴやF1のカーボンファイバー モノコック、イタリア製のドレスシューズなどから着想を得て作られた1足。ヒザを傷めていたジョーダンのため、クッショニング機能を向上。ヒールパーツがかかと中央まで上がっているのもおもしろい。エア ジョーダン 19(2004年)
現役引退ののちリリースされた初のモデル。過去シリーズでも類を見ない軽量性を素材革新によって実現している。毒蛇であるブラックマンバからインスパイアされたデザインはネクストジョーダンとも呼ばれた名選手コービー・ブライアントのシグネチャーモデルとして引き継がれた。エア ジョーダン 20(2005年)
AJ15以来となるデザイナー、ティンカー・ハットフィールドの復帰が大きな話題となった第20世代。サイクリングシューズからヒントを得たアンクルストラップとレザー加工で刻まれたミッドフットのシュラウドなど先進テクノロジーをバランスよくまとめ、洗練された1足に。エア ジョーダン 21(2006年)
スポーツカーをイメージソースとし、高級マテリアルを採用。インソールは2種類から選択可能となっている。次なる世代に向けたプロモーションが全米で話題となり、現役を知らないティーンエージャーにもアプローチ。新世代のファンを獲得した、ナイキのPRの真髄が見える1足。エア ジョーダン 22(2007年)
当時の最新ステルス戦闘機、F-22からインスパイアされた同作で久しぶりにミリタリーモチーフへと回帰。当モデルはシリーズでは珍しく、アッパー一面にバスケットボールの素材を使った“ゲームシューエディション”だ。前作同様にクッショニングシステムを選択可能にした。エア ジョーダン 23(2008年)
背番号と同じ23代目という大きな節目として、シリーズ完結の噂まで流れた同作のモチーフはジョーダン自身。指紋モチーフや直筆のサインで彼を表現している。これまでのハイテク志向から、サステナビリティへ方向転換。環境に配慮された素材を厳選したうえで製作されている。エア ジョーダン 2009(2009年)
ジョーダンの象徴である数字、23の次作となる24代目からはナンバリングを終了し、ネーミングを年号に一新。チームジョーダンの陸上アスリートの義足に使用されているカーボンファイバー素材をベースとした最新テクノロジーを搭載した。シリーズ第2章の幕開けとなる。2010年代のエア ジョーダン
エア ジョーダン 2010(2010年)
シリーズ史上初となる透明のアッパー、シースルー仕様の窓“TPU ウィンドウ”が側面に配置された特徴的なルックスが目を引く1足。最高水準の衝撃吸収性も搭載。14代目でもタッグを組んだ、ティンカーとマーク・スミスという2人のデザイナーによる共作として誕生した。エア ジョーダン 2011(2011年)
90年代のエア ジョーダンを思わせる流線型のラインが特徴。レザーのパティーナを使ったシンプルな外見のなかに、最先端の技術が詰め込まれている。ジョーダンの誕生年であるうさぎ年をテーマに中国の旧正月を祝った限定モデル、ラビットカラーが大ヒットとなった。エア ジョーダン 2012(2012年)
近作において徐々に定着し始めたカスタマイズ需要に応える形で登場したモジュラーシステムが、6通りの組み合わせに対応。フライワイヤーテクノロジーを採用し、軽量化とホールド力向上が実現した。高機能&最新デザインを打ち出し、ジョーダン ブランドたるゆえんを確立。エア ジョーダン 28(2013年)
年号となっていたモデル名が再びナンバリングに変更された今作。デザイナーのティンカーがコンセプトとしたのは忍者の足袋といわれている。近未来的なアッパーは、ジップを閉めれば筒長の足袋風ルックスに。ハイテク素材を駆使した21世紀のステルスを表現している。エア ジョーダン 29(2014年)
パフォーマンスウーブンアッパーをシリーズ初導入。世界最高レベルのイタリアの職人に思いを馳せ生まれた革新素材は、耐摩耗性をはじめ多くの機能を1枚の素材で実現することに成功している。最先端織機による高度な編み立て技術で懐かしのエレファント柄が表現された。エア ジョーダン 30(2015年)
ジョーダン在籍当時のノースカロライナ大ユニフォームに使用されていたアーガイル柄をジャカード織りで再現。アッパーはフライニットとウーブンを掛け合わせた新素材。地球のイラストやコスモ柄のグラフィックで彼がバスケ界に登場した衝撃をビッグバンで表現した。エア ジョーダン 31(2016年)
ジョーダンファミリーの一員であるNBA 屈指の名ポイントガード、ラッセル・ウェストブルックのために開発されたモデル。無重力レベルの軽さとパフォーマンスをコンセプトに、宇宙産業で用いられる高度な繊維技術を活用して生み出した新素材“フライウィーブ”を採用。エア ジョーダン 32(2017年)
初めてリーグMVPを受賞した1988年のAJ3の印象的なカラーリングをモディファイ。ヒールにはファンの多いAJ シリーズのシンボリックなエレファントプリントが施されている。シュータンの内側には“M.V.P.”タグを配し、彼とブランドにとって栄光の1988年を想起させる。エア ジョーダン 33(2018年)
チャッカブーツのようなシルエットで、抜群のフィット感を追求した1足。フィットシステムの内部構造を露出させたデコンストラクトなデザインも特徴。人気アーティストであるトラヴィス・スコットをコラボレーターに迎えた特別エディションも存在し、ストリートでも映える。エア ジョーダン 34(2019年)
ソールとアッパーにマストでない素材をすべて取り除き、アスリートに必要とされるものだけを取り入れたAJ34。ジョーダン エクリプスプレートという2枚のピバックス素材と前足部のズーム エア ユニットを組み合わせたテクノロジーが反発力を生み出す。軽量性も抜群だ。2020年代のエア ジョーダン
エア ジョーダン 35(2020年)
超軽量のAJ35は、スピードとパワーを生み出しながら、水平方向と垂直方向の動きをサポート。大型のビジブル ズーム エアユニットを搭載した立体的で安定感のあるミッドソールは屋外コートでのプレーにも最適。すべてのバスケットボールプレーヤーが求める機能を凝縮した。エア ジョーダン 36(2021年)
アッパーには新素材レノ- ウェーブを採用。軽く強靭で、激しいプレーにも耐えうる。さらに歴代で最も広くズーム エアを使い、強力な跳ね返りを生み出す。まとめ
2021年までに、36ものモデルを展開してきたエア ジョーダン。その特性が生かされた各モデルは、時代とともにさまざまなパフォーマーを魅了してきた。もちろんその影響力はバスケットボールにとどまらず。ファッション界にだってムーヴメントを作っているのだ。 さて、次なるモデル、エア ジョーダン 37はいかに。今年もその動向から目が離せない。写真/高橋敬大、丸益功紀(BOIL) 文/ニッセンシュウ 撮影協力/aj_sunio、CARTER_AF1、SKIT 吉祥寺、宅万勇太、naka2sneakers、yusuke_airforce1、WORM TOKYO