海外で生まれたモデルたちは、ニューバランスのファンたちが首を長くして日本での発売を待っている注目のモデルばかり。インラインにも影響を及ぼすほど、その人気は絶大だ。
コラボというと、あからさまなコラボ感をアピールするデザインを採用するブランドが多いが、ニューバランスはあくまでも“らしさ”を念頭に置いた仕上がりを貫く。その魅力を、何度か別注も手掛け、ニューバランスの仕入れも担当するオッシュマンズの商品開発部に従事する佐々木さんに聞いてみた。
＼教えてくれたのは／
オッシュマンズ 商品開発部
佐々木 強さん
アメリカものを中心に、国内外のスポーツ& アウトドアウエア& ギアを揃えるオッシュマンズで商品開発やバイヤーを務める。ニューバランス所有数は約60足
ありそうでない絶妙配色でトレンドを超越した秀作。
990v3をベースにした本コラボは、ジャスティン・サンダースが手掛けるジョウンドとのタッグ。イェ（カニエ・ウェスト）率いるクリエイター集団、ドンダ出身と聞けば、どれだけ注目度の高いコラボかわかるはずだ。990v3は、990シリーズの11代目として2012年に登場し、今も人気を博しているモデル。シュータンには990v3を象徴するワッフルパターンを採用しており、アッパーはグリーンに染められたピッグスウェードを使用。2020年に発表した992でも披露したグリーンだが、今作はそれよりも明るい発色になっている。「個人的には以前販売したグレーの方が好みです（笑）、そもそもミニマルで余計なデザインをしないジョウンドらしい仕上がりだと思います。絶妙にくすぐられる感じ。いわば、通好みなコラボですよね。いかにもコラボ顔じゃないから、トレンド関係なく履き続けられます」。昔は人気モデルをベースにしたコラボものが多かったが、近年は1000番台のコラボもよく見かけるようになった。「最近のコラボでおもしろいなと思うのが、990など定番的な品番に戻らず、近年開発した2002に回帰したりしているところ。今までとは違うカテゴライズに関してもフィーチャーしているのを感じます」
NEW BALANCE × JJJJound
派手過ぎない玄人好みなアレンジにみんな夢中。
海外でのコラボものは、ファンの心を掴んで離さない。その理由は基本デザインを変えずにコラボを行う姿勢。根底はクラフトマンシップにあると佐々木さんは理解する。「大々的なアレンジはしないですよね。トレンドにも無理やり迎合しない印象です。だからこそ長く愛用できるし、酸いも甘いも噛み分けた大人のスニーカー好きから支持されるのだと思います」。ニューバランスのコラボといえば、アメリカブランドが多い。そんななか、ここ最近は新しいモデルやデザイナーとのコラボに積極的になっている。「クリエイティブディレクターに就任したエメ レオン ドレのテディ・サンティスなど、まさにだと思います。ベースとなるモデルも、2000番台が選ばれるようになってきました。色の種類も増えたと思います。でも、ギリギリのラインは維持している。そこのバランスが、昔に比べて絶妙な塩梅になっているのかなと」。その地に足を着けた姿勢は、コラボスニーカー市場が過渡期を迎えた今、選びの指針となる予感がする。「これまでもこれからも、結局、ニューバランスに戻ってくるんですよね（笑）」
NEW BALANCE × Aime Leon Dore
90年代ストリート人気の今、気になるのはこんな配色。
ニューバランス初のメイドインUSAクリエイティブディレクターが手掛ける、ニューヨーク発のブランドとのコラボは、2008年に登場した993をベースモデルに採用する。マニア好みな同モデルを、トレッキングシューズを想起させる独特な配色で仕上げた。どこか90年代的な顔つきは、普遍的にして今のトレンドとマッチする。「ジョウンドと近いような雰囲気を感じますね。エメ レオン ドレのウエアのコレクションとマッチする仕上がりになっていると思います。シーズンルックでモデルが履くのは大体コラボものなのですが、たとえばテーラードジャケットにニューバランスを持ってくるなどスタイリングがうまいんですよね。洋服からデザインを考えているのかなと思わせるほどハマりがいいんです。モノ単体じゃなく、コーディネートを優先してデザインされた1足だなと感じますね。90年代的な配色も、トレンド性がありますから……。でも一方で、いかにも今っぽい感じとはまるで違う。その感覚の鋭さはさすが今注目のデザイナーと言えます。やっぱり誰しもまずはカラーリングにひかれて、スニーカーを買うじゃないですか。この配色はまさに男心をくすぐる色合いで、たまらないですよね」
NEW BALANCE × Salahe Bembury
今どきなニューバランスを象徴するアレンジぶり。
以前、イェ率いるイージーのデザイナーや、ヴェルサーチェのスニーカーヘッドデザイナーを務めていたとあって、斬新な配色が見どころとなるコラボ。モンゴル高原の遊牧民から着想を得た、アウトドアスニーカーだ。ヒールには緊急時用の笛も搭載され、一風変わったヴィジュアルが特徴だ。ベースは574。990v3などのアーカイブモデルを融合させ、574ユルトと名付けた。3色展開で、うち2色はビビットカラー。「個人的にはカラフルな配色展開の中に、グレーの単色を採用したのが意外でしたね。サラへ・ベンバリーのコラボで定番色をやることはないと思っていたので、これは間違いなく売れるだろうなと思いました。しかもグレーは鉄板ですが、それ以外は今まであまり好まれなかった配色。それを成立させている点が、さすがだなと思いましたね。個人的には、目の大きなメッシュに注目しています。ここまで大きいのは、これまでのコラボで見た記憶がないんです。あくまでさりげないですが、トレンド性を感じさせるデザインはニューバランスならではでさすがだなと。それからやっぱり、ヒールの笛。あれは、思いつきませんでした（笑）。デザイナーコラボならではの発想が詰まった1足ですよね」
