サブスクが音楽の聴き方としてベーシックになっている昨今だが、実は今もレコード人気は続いている。しかしサブスクに比べて圧倒的に不便なのも事実。ではなぜハマってしまうのか? その魅力についてコレクターに聞いてみると、そこには経験や人生が関係していた。
レコードのDJプレイは
所作だって魅せどころ!
オフィスの壁一面の棚に収まりきらず、床にもあふれ出るレコードの数々。1枚は薄いながらこの状態となると、もはや何枚あるのやら……。「2万枚までは把握していたけど、それ以降は数えていないね……」。吉永さんは学生時代から音楽に浸かり、いろんなコミュニティと繋がるなかで小西康陽さんと出会い、彼のレーベルに参画したという。そして現在の活躍に至るまで音楽とともに生きてきた。「若いころは当時でいうパーティ遊びが楽しくてさ。そこで出会う先輩たち、とくにDJの人たちがこれまたカッコよくて……。憧れて、いろいろ教えてもらったことがず〜っと今に繋がっている感じですね」
収集品が流行った世代なのもあって、ヒップホップ流れでネタ元を掘り、ジャズにソウル、ファンクにラテン、ハウスと、音の世界を広げていったそうだ。近年はわざわざ7インチ盤で買い直すこともあるという。「音圧の違いとかバージョン違いとか楽しみはいろいろ言われているけれど、7インチ盤は何よりDJとして軽くて持ち運びやすいのが嬉しい(笑)」。
となると、重くて場所を取るレコード盤になぜこだわるのだろうか?「まずヴァイナルでプレーする所作が好きなんですよ。紙芝居みたいだし、エンタメのひとつだと思う。それにジャケットを見せるだけで会話も盛り上がるからコミュニケーションツールとして優秀ですね。ただ所有欲が強すぎて手放せないだけかも(笑)」
マイベストはこの1枚!
『クレスト・オブ・ザ・ウェーブ』
ケノ・デューク/コンテンポラリーズ
話を聞いたのは……
吉永祐介さん
アートディレクター・DJ
1977年生まれ。幅広くデザインを手掛け、担当したCDジャケットは1000枚超え。秋には自身の音源もリリース
photo : Hiroki Nakayama(IL NIDO.STUDIO)、Tomoo Shoju(BOIL)、Yuya Yoshimoto text : Shuhei Sato edit&text : Yuta Yagi