【僕らの湘南移住計画】住んで17年。地元民が足繁く通う酒バーの店主から見た逗子とは。

神奈川県・逗子市にあるカジュアルダイニングバー<マルブン>店主の川田さん。暇さえあればサーフィンや釣りを楽しむ

海辺に住む。それって夢のようで、意外に身近だったりする。ほら、そのスマホで物件情報を見てみ? 現実的でしょ。居が決まれば、あとクリアすべきは地域柄だ。どんな人が住んでいて、どんな暮らしをして、どんなお店があるのか。だから実際に湘南で住んでいる人たちに、湘南について聞いてみました。

まずは、地元の人を中心に賑わうカジュアルバー〈maru-bun(マルブン)〉の店主・川田 文隆さんのもとへ。神奈川県逗子市に引っ越してきて17年。サラリーマンとして都内まで通勤していた経験があるともなれば、得られる情報も等身大で有益かも(?)。

ーーまず、お店の印象なんですけど、いろんなメニューがいっぱいありますよね。

お酒をメインにしたカジュアルなバーなんですけど、今ではもう幅広くやっていて。僕、たぶん多動症なんですよ。だからいろんなことをやりたくなっちゃうんです。しかもけっこうな凝り性で飽き性(笑)。

ーーBARと言っていましたけど、メニューにラーメンって書いてありますもんね(笑)!?

そうなんです(笑)。ただ、これには理由があって。当時、逗子に家系ラーメンが全然なかったんですよ。でも横浜の家系ラーメンが大好きだから、もう自分で作るしかないと思って独学で始めました。もう9年ぐらい経ちましたかね……。最初は限定メニューで細々と出していましたが、今ではもうメインで置いてある感じ。

期間限定の家系豚骨ラーメン980円

ーー長い道のり……! とはいえ、ラーメンは奥が深いとよく聞きます。

今一緒に働いている彼が、葉山のあじ平(※閉店)っていう超名店で20数年働いてたんです。そしたら、もうラーメンを本格的にやるしかないと思って。

あさり鶏白湯ラーメン1230円

意外と便利。逗子発、通勤電車の1時間。

ーーそもそも生まれも育ちも逗子ですか?

もともと横浜なんですよ。結婚して横須賀とか住んだり点々とした後に逗子に流れ着いた感じ。鎌倉は渋滞があって仕事行くのにもちょっと厳しいかな……、葉山は車がないとアクセスしにくいからな……。じゃあ逗子かなって(笑)。

ーー実際に引っ越して住み始めた時はどんな印象でした?

ここ便利じゃんっていうのに気づいて(笑)。京急線もJR線も走ってるし。

ーー逗子在住だと、あまり電車を使わないイメージですが、使う機会があったんですね。

実は、引っ越した当時は東京に勤めていたんです。

ーー東京まで…!?  1時間くらいですか? 遠い…。

でも始発で行けるから、めっちゃラクですよ。早朝に海入って上がって、そして電車で座っていける。寝てもよし、読書してもよし、音楽聴いてもよし、行き帰りで映画も 1本見れちゃうし。ある意味、これだけ移動時間があると有意義になるというか。みんなそれに気づいて引っ越してきてる人が多いと思うんですよね。

ーーサラリーマンだった川田さんが今のお店を始めたワケは?

やっぱり2011年の震災がきっかけですかね。東京から帰って来れなくなって、このまま何もしないで人生が終わっちゃったりしたら嫌だなと。好きなことやろうって突発的に始めました。

ーーおお、すごい行動力ですね…。

ちょうど物件を探しているときに、ここの物件が1年ぐらいで居抜きで出ていくってなって。もともとイタリアンレストランというのもあり、厨房機器も揃って、しかも全部新品同様で。あ、これいいじゃんみたいな感じで決めちゃいました。

ーーお店を逗子で始めてみて大変なコトもあったんじゃないですか?

中心部からもだいぶ離れてるし、海に行き帰りの動線でもないんで観光客も来るわけじゃないし、最初はもう全然人が来なくて。ぼちぼち軌道に乗ってきたなと思ったら、次はコロナ。3年ぐらい普通に営業できないで、「うわ、もう飲食店やめるんだな」なんて思いながら何しよっかなとか考えてました。

イラストレーター・花井祐介さんのイラストも大きく描かれている

ーーたくさんお客さんが来ているような印象だったので、驚きました。

ちょこちょこ地元の人が来てくれる今でこそそうですね。お店としては地域の人がこう集まってコミュニケーションが取れる場所を1番に目指していて。みんながこう繋がっていけば問題もなくなると思うし。そういった意味では地域貢献できてるのかな〜(笑)

カウンター横にはスケートボードが飾られていた

 

スローな逗子のよさ。

ーーちなみに、オフはやっぱりサーフィンですかね。

そうですね、もう曜日は全然限らずで、朝波あればお店終わってから行ってていう感じが多い。仕事が夜2時、3時に終わって、夏だと4時、5時から入れるので、波があればもう寝ないで行っちゃって2時間ぐらいやって帰って寝るみたいな感じです。

壁面には、サーフィンに関するイラストや写真が飾られる

ーーおお、海に近い逗子ならではの生活ですね。ほかにも都会との違いはありますか?

都内みたいにいろんな人が頻繁にすれ違うことはあんまりないんですよ。人口5〜6万ぐらいのコミュニティなので、いい意味でコンパクト。だから歩いてたら知り合いとバッタリみたいなこともよくある(笑)。

ーー日常的にコミュニケーションができる環境って、現代じゃなかなかないですよね?

逗子は挨拶ができる町なんですよ。たとえば朝に犬の散歩してる時とか、「おはようございます」を言うのが普通。都内とかはやっぱりそういうのないじゃないですか……。

ーーそもそも人がたくさんいて誰が誰だか……。

すごく流れが早いし、みんな自分のことに必死。一方で逗子ってもっとスローなんですよ。隣町の鎌倉もそうだと思うし、まあ自然が多いところってたぶんそうなんだと思います。だけど、それに慣れすぎちゃってもね(笑)。冗談混じりでも、もう東京行けませんとか、あれ東京ってビーサンで行っちゃいけないんだっけとか、よく聞きますし(笑)

ダーツも楽しめる店内

 

ハードコアは苦手。ワカメスタイルでいこう。

ーー時間もそろそろなので……、最後に川田さんにとっての逗子とは?

う〜ん、なんだろう(笑)。

……心の拠りどころかな。本当にこの地域じゃないとたぶん過ごしていくのは無理かなと(笑)。そのぐらいどっぷり浸かっています。これからは、もっとどっぷり行こうと思ってるんですけどね。

ーーこれ以上どっぷりしちゃったらどうなっちゃうんですか?(笑)。

どうなりますかね。でも、もうそろそろポックリいっちゃう気がするんですよね(笑)。

ーーえ〜そうですか? サーフィンもしてるし、健康そうに見えますけど……。

そう言われるんですけどね、意外といっちゃうんじゃないかな〜って(笑)。でも、それも自然の流れかなと思います。僕のライフスタイルはワカメみたいに根っこはしっかり張って、上はゆらゆらと自由に揺れながら生きていく感じ。どこに飛ばされても何が起ころうとも柔軟に対応できるように、常にニュートラルな状態を保っていたいですね。このバランス感覚って、人生の中で一番大事にしてる部分かもしれません。

チラシ等が置かれている一角

ーー川田さんって、なんだかまろやかな方なんですね。

ハードコアで「ウー!」みたいな感じは苦手なんですよ。ちょっとゆったりフラフラしてるぐらいがちょうどいい。

ーー思いっきり勘違いしてました(笑)。すみません。

いやいや(笑)。実は同じく逗子に住んでるあるおじさんの方が、よっぽどハードコアですよ。今日とかも来そうですもん。カウンターに座って2時間ぐらいバーッと喋って、「あ〜よく喋った。つまんねえ店だなぁ」って帰っていく(笑)。でも、本当におもしろくて温かい人が多い、いい町ですよ、逗子は。

 

 

SHOP INFO

maru-bun(マルブン)
住:神奈川県逗子市逗子5-4-24
TEL:046-854-8688
営:17:00~翌1:00 (料理L.O. 翌0:00 ドリンクL.O. 翌0:30)
休:不定休
Insta @bar_maru_bun

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