世界で活躍するアスリートたち。トップ選手たる所以は、本番で最高のパフォーマンスを発揮できる心の強さがあってこそ。彼らのメンタルから、ここぞというときにあるべき〝心の姿勢〟を見つけよう。
![]() |
話を聞いたのは……
上田瑠偉 早稲田大学陸上同好会在籍中にトレイルランニングの世界に飛び込む。2014年に日本の権威あるレース『ハセツネカップ』を大会新記録で優勝する。2021年にはスカイランニング世界選手権で金メダルを獲得した。 |
冷静沈着なマインドを持つ
山岳ランナー。
緊張感とリラックスの
バランスを知っておく。
国内外における数々のレースで優勝をさらい、名実ともにトレイルランニング界で世界最高と謳われる選手のひとりとして君臨する上田さん。快進撃を続けるその強さの秘密は、自分のマインドを最適なバランスに整えること、そして冷静沈着な判断力にある。「レース前は練習量を落として、カラダも心もリラックスさせるよう意識していますね。いろんな舞台を経験したことで最近は昔ほど緊張を感じることはなくなりましたが、本番に向けて気持ちも上げていかなきゃいけない。緊張しすぎるとカラダがこわばってベストなパフォーマンスを発揮できないのは確かなんですが、かといってリラックスしすぎても集中力が落ちてしまう。そうなると、いざというときの爆発力が弱まり足元をすくわれかねません。この相反する緊張とリラックスのバランスを調整するのが難しいところ。理想はいつも50:50のバランスでレースに臨めることですね」。
トラブルに動じない。
その精神は経験の積み重ね。
トレイルランニングは自然を舞台にしたレースのため、本番では予測不能な事態に直面することも少なくないという。そんなときでも、決して慌てることなく平静を保っていられる精神力は豊富な経験の賜物だ。「山を走るトレイルランニングは、天候や路面のコンディション、寒暖差など不確定要素が多いスポーツ。脚が痙攣したりつったりというトラブルもよくある。そんな状況に陥っても対処できるよう、どんな補給アイテムや装備を準備しておけばいいのかというのは、これまでの経験である程度判断できるようになりました。焦るような事態が少なくなれば、それだけ走ることに集中できます。余計な雑念が生じると、やはり失速してしまいますから……。可能な限り無心で走れるような状況を作るようにしていますね」
たとえ思うような結果が残せなかったとしても、世界王者の心が大きく乱れることはない。「もともとポジティブな性格というのもあるかもしれませんが、レースで負けることがあっても、それをネガティブに捉えて引きずるようなことはほとんどない。アスリートとはいえ、いつもいいパフォーマンスができるわけではありません。何がダメだったのかを振り返って反省はしますが、次のレースにそれを活かせればいい。参加するレースは年間で複数回に及ぶので、正直いちいち落ち込んでいる暇はないというのもありますが……。僕、切羽詰まったような状況に追い詰められとしても、だいたいはなんとかなると思っているんですよ。傍から見ると、その開き直り方が逆に心配になることもあるようですけど(笑)」
進化のために
自分への好奇心を絶やさない。
高校時代は駅伝に出場する名門校の選手だったが、度重なるケガのせいで満足のいく成績を残すことができなかったという上田さん。それでも走ることをやめず、ついにはトレイルランナーとして世界の頂点にまで上り詰めた。そしてこれからも、まだまだ走ることへの欲求がやむことはない。「僕が目指すのは、〝速い選手〞よりも〝強い選手〞。それはつまり、どんなジャンルのフィールドでも勝てる選手ということ。それには自分自身を更新し続けることが必要ですね。これまでは比較的短い距離のレースで世界一を実現させてきたのですが、より長い距離のレースに挑戦したとき、自分のカラダは一体どんな反応をするのか? よりリスクが増えるなかで、自分自身をどうマネジメントしていくのか? 新しいシチュエーションで出会う新しい自分への好奇心が、走ることへの衝動のひとつになっているかもしれません」
心をととのえる
お気に入りアイテム!
眠っている間に
疲労回復をサポート。
使い始めてからすぐに効果を実感したというリカバリーウエア。朝すっきりと目覚められるため、海外の遠征先には必ず持参!
photo : Kazuo Onodera、Yuji Kawada text : Yuki Kimijima edit : Sonomi Takeo