世界で活躍するアスリートたち。トップ選手たる所以は、本番で最高のパフォーマンスを発揮できる心の強さがあってこそ。彼らのメンタルから、ここぞというときにあるべき〝心の姿勢〟を見つけよう。
話を聞いたのは……
西窪友海 2013年に初めて日本代表としてトライアルバイクの世界選手権に出場。2016年、2017年と2年連続で全日本タイトルを獲得。その後はトライアルバイクのみならず、自転車を使った映像制作でも才能を発揮している。 |
純粋無垢に自転車を愛する、
トライアルバイクライダー。
バイクトライアルの大会で全日本チャンピオンに輝いて以降、街の中でアクロバティックなトリックを決める〝ストリートトライアル〟を主戦場にする西窪さん。細いガードレールの上を走ったり、急な傾斜から自転車ごと一回転しながら飛び降りたりと、〝忍者ライダー〟の異名のとおり、映像では奇想天外かつ豪快なトリックが次々と繰り出される。常に命の危険と隣り合わせのクレイジーなライディングは、見ているこちらがハラハラしてしまうほど。常人であれば恐怖心から到底真似できないような芸当だが、西窪さん本人はライディングに挑む際どんな心境でいるのだろうか?
ピュアな情熱を持つことが
成功につながる。
「もちろん僕にも恐怖心はありますよ。何年やっていてもやっぱり緊張もしますし、撮影本番の前日はそのせいで眠れないことだってある。映像だけ見ると頭のネジが飛んでるんじゃないかって思われるかもしれませんが(笑)。クラッシュしたらケガをするし痛いし、内心めちゃめちゃ戦ってます。でもそれ以上に、まだ誰もやったことがないようなやばいトリックを成功させて、みんなを驚かせたいっていうパッションの方が勝るんですよ。これは僕が自転車に乗り始めた小学6年生のころからずっと変わらずに持っている気持ちですね。あとはもう、目の前のトリックを成功させることに集中して自分のために乗るだけ」。リスキーな場所やトリックに挑む原動力は12歳のころから何も変わっていないと、それこそ童心に帰ったような無邪気な笑みで話す西窪さん。ライフステージの変化とともに家族やスポンサー、撮影クルーなど背負うものが増えた今も、〝誰かのためではなく、自分のためだけに乗る〟という、ライダーとしての原点である自転車へのピュアな愛を忘れずにいたいという。
恐怖心に勝つのは
挑戦への圧倒的ワクワク感。
トリックも、いかに自分が気持ちよく決められるかが最優先。苦手なトリックや練習不足だと感じるトリックは、自分が気持ちいい方法で挑戦できるように改善していく。「ストリートトライアルの世界は大会で技のすごさを競うのではなく、自分が好きな技を自分らしいスタイルで表現するカルチャー。だから、わざわざ気持ちよくないことを無理に頑張る必要がない。でも人を驚かせようと思うとそれなりのリスクを冒さないといけない場合がある。だから、恐怖心がワクワクを超えないように、どうトリックをメイクしていくか。そのバランスが大切」
自分の〝好き〟を追い続ければ
おのずと結果はついてくる。
西窪さんが情熱を注ぐもうひとつのライフワークが映像制作だ。「好きで好きで止められないので、自転車はきっと一生乗り続けますね(笑)。でも、ずっとプロにしがみつく必要はないと思っています。何かに縛られたり強制されたりしながらも、プロであり続けるために自転車に乗るということはしたくない。じゃあ、第一線を退いたとしてこの先何をするかというと、僕には映像制作がある。大学時代、建築を勉強していたこともあって、クリエイティブな作業もすごく好きなんですよ。それが高じて自分のライディング映像をYouTubeに投稿したら、それが世界中のたくさんの人に観てもらえた。今では映像プロダクションを作って、プロデューサー兼クリエイティブディレクターという立場でほかのアスリートの映像も制作しているんですよ。結局は、自転車に乗ることも映像制作も、ただ好きだからやっているだけ。その〝好き〟を突き詰めていったら勝手に結果もついてきた。これからも、自分の人生そんな感じで進んでいくんだろうなって思ってますね(笑)」
心をととのえる
お気に入りアイテム!
これを飲めば
大丈夫という安心感。
「よし、やるぞ!」と自分を奮い立たせるスイッチをオンにしたいときは、レッドブル(Red Bull)を必ず飲む。大学時代からずっと続くルーティンだという。
photo : Kazuo Onodera, Yuji Kawada text : Yuki Kimijima edit : Sonomi Takeo