地球に寄り添った服選びをしてみると、知らなかったブランドを発見することがよくある。新たに出合ったのはアンノウトとブレストだ。
廃棄される運命のデニム生地がメランジ調に変身。
アパレル業界は残念ながら環境負荷の高い産業といわれている。その理由のひとつが裁断くずの存在だ。生地から型紙に沿って服を作るための布を切り出すと、どのパーツにも使えない小さな端切れが余ってしまう。これが裁断くずで、通常ゴミとして廃棄される。だがそれは、大切な資材を無駄にしているのと同じだ。
その裁断くずを魅力的な素材へとよみがえらせたものが、アンノウトのパステルインディゴと名付けられたリサイクルデニムだ。インディゴデニムを作る際に余った裁断くずを手間暇かけて綿状に砕き、新しい綿と混紡すると、淡く優しいブルーの糸に再生できる。この糸はヴァージン原料から紡がれる糸よりも強度が弱く、太さもまばら。そのちょっとした不均一さやネップの混入などをあえて味として残しながら、ゆっくり丁寧に織り上げることで、柔らかくメランジ感のあるデニムになるというわけだ。
さらに経糸に新しい糸、裏に出る緯糸に裁断くず由来の糸を使って、ほんのり淡いブルーが透ける唯一無二の風合いに。このナチュラルな雰囲気がリラックスシルエットのベイカーパンツと実に好相性! 地球の未来のため云々を抜きにしても、ココにしかない魅力的なデニム素材なのだ。
アンノウトは日本の繊維商社の若手社員たちの手によって2021年に立ち上げられたばかりのブランド。このように廃棄される運命のデニム生地を再資源化するだけでなく、織りネームやウエストのゴムなどもできるだけリサイクル素材を使おうという姿勢もすばらしい。新しい糸からでは生まれない、アップサイクルのお手本のようなメランジデニムから、どうやら目が離せなくなりそうだ。
リサイクル素材のシェルに生分解性中綿を採用。
雨風をシャットアウトするシェル生地に、ダウンや化繊の中綿を封入する。この2大素材を掛け合わせたアウターは、僕らが手にできるウエアのなかで最もハイスペックであり、暖かい。とはいえ、高機能の先端を行くアウターはケミカルな側面があるものも••••••。自然を愛するアウトドアマンが手にするようなテック系アウターが地球に負担をかけているとしたら、なんと皮肉なことだろう。
ブレストは、険しい山々と深いフィヨルドに囲まれたノルウェーの地方都市、オーレスンで立ち上がったアパレルブランド。都市部でも絶えず天候が変化するため、そこでしっかり機能するアウターを作り続けている。サステナビリティにも2005年の創業時から着手。ほとんどのアイテムでペットボトル等を再生させたリサイクルマテリアルを採用し、レインウエアには欠かせない耐久撥水加工はPFCフリー。焦げ付かないフライパンでおなじみのフッ素化合物を使用せず、水分を弾くコーティングを施している。そして今作では、保温性を高めるための中綿にプリマロフトバイオを導入した。これは世界初の生分解のある化繊断熱材で、おまけに100%リサイクル素材。つまり、このアウターの中綿は土に埋めたらやがて自然へと還るのだ。
自然と調和するデザインも持ち味で、北欧デザインらしいミニマルな機能美からも目が離せない。その完成度の高さは、英国のブラウンズをはじめ、欧州の名だたるセレクトショップでセールスされているほどだ。流行に左右されない普遍的な魅力があるので、あらゆるシーンで長く活躍するのは間違いない。それって結局、とってもサステナブルじゃない?
写真/正重智生(BOIL) 文/礒村真介(100miler)