地厚なスウェットパーカ、 安心感がハンパない!

サーフィンやキャンプ、サイクリングなど、アクティブシーンでとにかく使えるヘビーウエイトなスウェットパーカは僕らの絶対的スタンダード。だからこそ、この秋はいつも以上に生地やブランドの背景にまでこだわってアイテムを選んでみよう!

チャンピオン(CHAMPION)

自社のヴィンテージを忠実復刻した“トゥルー・トゥ・アーカイブス”シリーズ。右:1950年代の後付けフードと呼ばれる仕様。2万5300円 左:1970年代後期のレーヨン混杢グレーボディを再現したもの。2万7500円(ともにヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター)
 

ヴィンテージの人気作を細部まで本格的に復刻!
ツーリングしたり、自然の中へ繰り出したり、アクティブにカラダを動かしたい休日。そんなときについ手が伸びるのが、チャンピオンのリバースウィーブパーカだ。それもそのはず、スウェットといえば、かつての最新スポーツウエア。編み地ならではの伸縮性を運動着に生かしていたワケだ。だがその半面、洗うと縮むという欠点も。そこで、チャンピオンでは縮みによるサイズチェンジを防ぐため、本来縦に使われている生地を横方向に使用。これがリバースウィーブと呼ばれている。両脇部分にはリブを採用することで、横への伸縮性を確保しながら、すこぶる快適な服を作り上げた。
 
メンズでいえばデニムに並ぶような定番のアメカジアイテム。近年はヴィンテージ市場で価格が高騰し、空前の盛り上がりをみせている。年代ごとのディテールの違いにハマりつつ古着店に通うのもいいけれど、そのディテールまでを忠実に再現した復刻モデルも狙いめだ。もしデイリーにガシガシ着倒すなら、手軽にゲットできるし、断然後者でしょ!


ヴィンテージ好きからは“タタキタグ”と呼ばれる、四方をすべて縫い込んだタグ。フード内側の縫い付け位置も1950年代当時のまま


1970年代後期の通称“単色タグ”や“単青タグ”と呼ばれるタグ。コットン、アクリル、レーヨンの混率もその時代と同じように再現

A.G.スポルディング&ブロス(A.G.SPALDING&BROS.)

高品質な和歌山産吊裏毛生地を使用。ボクシンググローブ型のポケットやロックフーディなどキャラがたった、サイドラインパーカ ダブルフェイス。3万6300円(スタンレーインターナショナル)
 

防寒ダブルフェイス仕様で冬のアウトドアでも平気!
チャンピオンと同じく、スウェットパーカの元祖的な存在といえばA.G.スポルディング&ブロス。起源は1 9 20年代までさかのぼる。それまでは吸放湿性のあるウールをジャージーに編んだウエアがアクティブシーンで着用されていたが、それだとどうにも肌触りが良くない。そこで裏地をパイル状にすることで吸水性を高め、伸縮性も兼ね備えたコットンの裏毛が考案されたという。’20年代の同社のカタログを見ると、スウェッ防寒ダブルフェイス仕様で冬のアウトドアでも平気!トパーカが確かに掲載されている。
 
こちらの〝サイドラインパーカ〟は、’30年代のヴィンテージを入手した同社のスタッフが復刻させた1着。サイドラインとはコートの外、すなわちベンチウォーマーとして着用されていた防寒着といえる。そのためポケットは左右が独立したアイコニックなハンドウォーマー形状になっている。ボディは吊裏毛スウェットを2枚重ねたダブルフェイスで、これも保温性を高めるため。キャンプ場の冷え込んだ朝でも、このダブルフェイスパーカがあれば、案ずることはない!


防寒着として考案されたため、内側にも表地と同じ生地が張り合わされた2重構造になっている。ちょっとしたアウター並みの保温力を誇る


ヴィンテージ感のある筒リブは、袖口にリブを縫い付けるのでなく、編みのピッチを変えて、ひと連なりに無縫製でリブを施す手法がとられている

ニアイコールハートコアリメディ(≒HERT CORE REMEDY)

音を感じるアーティスティックな1着。モノトーンでどんなコーディネートにも合わせやすい。アップサイクルヘビーウェイトパーカグラスアップル。9878円(ウィファブリック)
 

素肌にも懐にも環境にも優しい地球思いのパーカ!
こちらのパーカはこの夏にデビューした新ブランドのものだが、その成り立ちが一風変わっている。なんと、廃棄される運命だった未着用のスウェットをアップサイクルして作られているというのだ。
 
このすばらしい取り組みをスタートしたのは、衣料廃棄のない循環型社会を目指して運用されているウェブアウトレットモール、スマセルだ。そのために自社のオリジナル商品をと企画したところ、ミュージシャンの大沢伸一と、コム デ ギャルソンに携わってきたプリントデザイナーのミナミが賛同。大沢伸一が作ったサウンドスケッチを聴いたミナミが、そのイメージを元に膨らませたグラフィックを、スマセルの在庫にあったパーカにプリントしている。この手のアイテムだとプレミアムプライスのものが少なくないが、流通させるという主目的のため、価格が抑えられているのも嬉しい限り。これ1着で、もととなったボディの廃棄や新品を作るのに排出するCO2を140ggも削減できているそうだ。今、一番クールなスウェットパーカかもしれない。


地球環境への意識の高い大沢伸一がディレクションを担当。ミナミは彼のファンという縁もあり、アパレルデザインのプロとして参画した


アパレル在庫のマッチング販売などを手掛けるウィファブリックのオリジナルアイテムで、捨てられるはずだったパーカを有効活用した

キャンバー(CAMBER)

長めのリブとコンパクトなフードがキャンバーの特徴。アームホールが広く、昔ながらのゆったりとしたシルエットも好評だ。クロスニットプルオーバーパーカ。各1万5400円(ハイ!スタンダード)
 

ディス・イズ・ジ・アメリカンパーカ!

肉厚パーカのオールマイティな安心感は、実用的なプロダクト作りに長けたアメリカ発祥である点によるところが大きい。そのど真ん中的アイテムが、未だメイドインUSAにこだわり続けているキャンバーだろう。₁948年に生地の生産工場として発足したファクトリーブランドで、メインで作っているのはヘビーウエイトなスウェットやTシャツだ。生産はもちろん、生地やパーツの細部に至るまで米国製の素材を使用している。それはアメリカらしく実用第一、生産効率やタフさが重視されるからだろう。ほかのメイドインUSAアイテムと同じく、仕上がりの粗野な雰囲気に男心をくすぐる絶妙な味がある。だから無地でも、いや無地こそ独自のオーラを醸すのだ。
 
付け加えるなら、ブルージーンズ同様、丈夫で長く着用でき、やがてカラダになじんでくる着用感も魅力。新品の状態ではなく、着込んで風合いが出てこそ本来の魅力を発揮するってわけ。サイズ展開や色バリエーションが豊富なので、自分好みの1枚がきっと見つかるはずだ。


1948年、ペンシルバニアで歴史をスタート。長年スウェットなどを手掛けてきたファクトリーブランドで、米国らしい質実剛健な作りがウリ


素材は同社の定番肉厚スウェットであるクロスニット。地厚ながら特殊な製法なため、いたずらに重くダボつくことがない。耐久性にも定評あり

ナイジェルケーボン(NIGEL CABOURN)

50年代の米国ヴィンテージパーカがベース。腰リブとボディとで色が違うのは、物資が限られ手元にある糸で作らざるをえない時代の仕様をリスペクトしたデザインだから。50sパーカ3万1900円(アウターリミッツ)
 

日本で1カ所しか生産できないスーパーヘビー級の選手。
通常、地厚パーカはゴワッとした質感になりがちだが、本企画の最重量級、20・5オンスのナイジェル・ケーボンの着心地はあくまでふっくらだ。そのうえで超ヘビーウエイトだからコシも十二分、繰り返し洗ってもクタりにくく、型崩れもほとんどナシ。おまけにヴィンテージスウェット特有のヨコ段に走る表情も楽しめる。
 
超ヘビー級であるこのスウェットパーカを編めるのは、世界でも数えられるほどの台数しか残ってないアズマ編み機だけだ。吊り編み機ではないものの、昔ながらの編み機であるため、編むペースは非常にスロー。その分、1日の生産数が限られてしまうが、ゆっくりと空気を含みながら糸を編むので、凹凸のある表面感、ふっくらとした風合いが実現するのだ。
 
アズマ編み機が壊れてしまったら、はたまた扱える職人がいなくなれば、もう手に入らなくなるかもしれない超地厚パーカ。幸いにもすこぶる耐久性が高いので、1着あれば今後ウン十年は着まわせるはず。稀代のヴィンテージマニアが手掛けるツウなスウェットに感謝したい。


腕の動きが自由になるよう、肩から腕へS 字の曲線を描くよう縫われたフリーダムスリーブ。50年代に散見されるディテールだ


現存数が少ない70年代初期に製造された旧式のアズマ編み機で、丁寧に編み立てられている。レトロで柔らかい表情の仕上がりが魅力

モクティ(MOCT)

東京の方南町にスタジオを構えるインディペンデントな新鋭プリントレーベル、パハスタジオによりデザインが施された新アイテムがヘビーフリースフーディーだ。2万6950円(ユナイト ナイン)
 

杢グレーのスペシャリストが手掛けると一味違ってくる!
スウェットパーカの王道といえば、それは間違いなく杢グレーだろう。デニムやチノパン、ミリタリーパンツに合うカラーであり、霜降りのような杢感がスタイリングに深みを与えてくれるのだ。

モクティはその杢グレーの服にこだわった稀有なブランド。ブランド名のとおり杢グレーのTシャツや、杢グレーのスウェットにこだわったラインナップが持ち味だ。70年代に日本で初めて杢糸を製造したリーディングカンパニー、新内外綿が手掛けており、表糸にはオリジナルの杢糸であるGR7が用いられている。その特徴は何といっても、均一性を持つキレイな美しい杢糸であること。なおかつ無染色なので、染色を施した生地に比べると着心地がすこぶるなめらかであり、おまけに環境負荷も少ない。
 
この究極の杢グレーの質感を生かし、ドロップショルダーのルーズシルエットで設計されたのがこちらのパーカ。上質でリラックス感のあるムードが身上だ。カレッジプリントで流行した往年の地厚スウェットパーカの雰囲気を、現代的なサイズバランスに落とし込んでいる。杢グレーのニュアンスは、スウェットを少々大きめにダボッと羽織るときに最も映えるから、その点でも申し分ナシだ。


モクティの親会社である新内外綿が生産するGR7という杢グレーの糸は、国内初の杢糸。日本の杢グレーの色基準になっているんだとか


染め綿や異素材の混紡など、困難とされるテキスタイルに挑戦・開発してきた老舗メーカーだからこそ、ほかにない美しい杢グレーが生み出せる

レミ レリーフ(REMI RELIEF)

1940 ~50年代のヴィンテージパーカのディテールを取り入れて完成。使いやすいベーシックな3色がラインナップしている。“ジャズネップ起毛裏毛後付けパーカ”各2万680円(ユナイト ナイン)
 

アーシーな裏起毛でぬくもりを十二分に体現!
台風シーズンが到来し、うねりのチェックが恒例になりつつある今日この頃。海水温はまだあたたかくても、ひとたび陸に上がって秋風が吹いたら少々肌寒い。そんなときの定番はやっぱり肉厚パーカだろう。Tシャツやなんなら素肌の上から気軽に羽織れて楽チンだし、裏地が起毛していれば保温力も抜群なはずだ。裏起毛も、吸水性を求めるならバスタオルのような裏ループを。それ以上にぬくもりが欲しいなら、そのループをカットして起毛させた裏起毛を選ぶといい。

こだわりの加工技術で服好きからの信頼が厚いレミ レリーフの新作パーカは、裏起毛の心地よさを存分に味わえる1着に仕上がっている。アクリルやポリエステルを混紡することで糸サイズに粗さを宿し、色ムラや凹凸といった見た目にもぬくもり感たっぷりなジャズネップ地が特徴だ。それを裏起毛にすることで肌触りと保温性をアップ!そしてデザイン的にも表裏で色が異なり個性も十分! これからの季節、アフターサーフで羽織りたいのはまさにこんなスウェットパーカだ。


ヴィンテージ市場でも人気の高い後付けパーカ。クルーネックの中にしっかりとかみ合わせ、最高峰の技術で頑強にフードを付けている


あえて綿くずを残すことで色表現に深みが出せるジャズネップ生地を裏起毛させている。組成は綿65%、アクリル20%、ポリエステル15%


写真/正重智生(BOIL) スタイリング/小孫一希、松平浩市 文/礒村真介(100miler)

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