フライトジャケットにおける王道がMA-1ならば、フィールドジャケットにおける王道はM-65だ。そして、M-43が野戦用ジャケットにおける金字塔なのに対して、M-65は決定版といって差し支えない。果たしてその歴史とは? ミリタリーウエアの忠実なる復刻をし続けてきた、バズリクソンズの方に話を伺った。
教えてくれたのは……?
バズリクソンズ
企画統括
亀屋康弘さん
フィールドジャケットの理想形にして完成形。
M-43で誕生したレイヤリングシステムを踏襲しつつ、フードを内蔵したスタンドカラーに改良。大型のフラップポケットやウエストと裾のドローコードといったディテールの多くは、現在のフィールドジャケットにも受け継がれており、その原型がM-65によって生まれたといっても過言ではないだろう。
さまざまなファッションブランドからもリリースされるおなじみのモデルだが、その作りは実は簡単ではないと亀屋さんは語る。「一見ベーシックに見えますが、オリジナルのM-65は非常に手の込んだ作りになっています。ボディ、フード、ドローコードなど、さまざまなパーツでわざわざ別素材を採用しているんです」。ジョン・レノン然り、映画『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロ然り、象徴的に着用した人物が多いために有名となった印象があるM-65だが、フィールドジャケットとしては珍しく手の込んだ作りが満載というモノとしてのおもしろさがあるからこそ、ミリタリーウエアの大定番となったのだという。
球数が多いため古着屋でも豊富に見つけられるのでその変遷を紹介しておくと、ファーストモデルはエポレットがなく、コットン製のバックサテンを採用しているのはセカンドモデルまで。サードモデルでは、ベトナムの湿地帯を想定して軽く乾きやすいナイロン×コットンに変更されている。
知れば知るほど奥が深いミリタリーウエア。こういった各アイテムには確固たる史実があり、その事実を知ってこそ服選びがもっと楽しくなるのではないだろうか。
文/安岡将文