映画やドラマに登場するファッションの中でも、印象的深いアイテムといえばスニーカー。というのもその時代を表すファッションアイテムであり、ストーリーの中でも重要な役割を担うから。記憶に残るワンシーンとアイコニックなスニーカーが登場する名作品5つをご紹介。
『フォレスト・ガンプ 一期一会』
1994年に公開されたヒューマンドラマ。不器用ながら、まっすぐな心を持つフォレスト・ガンプが主人公。彼が人生を歩む中で、さまざまな人と出会い、成長していくストーリーだ。1950~60年代のアメリカを舞台に、カルチャーシーンや歴史上の出来事も交えて描かれる。作品の中で生涯の愛を捧げた女性、ジェニファーがプレゼントしたのがナイキブランド初となるスニーカー、コルテッツだ。このスニーカーを手に入れたフォレストは走ることに取りつかれ、ひたすらアメリカ横断をする。冒頭では履きつぶされてボロボロになったコルテッツが登場し、フォレストの歩んできた人生をスニーカーが物語っているシーンも印象的。
CORTEZ
ナイキ/コルテッツ
『キル・ビル Vol.1』
女殺し屋ザ・ブライドが、子どもと夫を奪われた恨みから、組織の元ボス“ビル”を殺す復讐劇が描かれたアクションムービー。監督であるタランティーノが映画の舞台に選んだのは日本。作中では刀を使ったアクションシーンなど日本の要素のほか、台湾、香港映画のオマージュもちりばめられている。ユマ・サーマン演じる主人公はタイトなシルエットにブラックのラインが入ったイエローのジャンプスーツを着用。足元は日本を代表するファッションブランド、オニツカタイガーのタイチでまとめられている。太極拳から着想を得てデザインされたタイチは、本作で注目され世界的にヒット。入手困難になっているほどだ。
TAI-CHI
オニツカタイガー/タイチ
『バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2』
タイムマシーン、デロリアンに乗って未来と過去を行き来する近未来的な設定が世界中でヒットしたSF映画。シリーズ3部作のうち、1989年に公開されたパート2では2015年という未来にタイムスリップしてストーリーが繰り広げられる。近未来を描いたシーンの中には、現代的なファッションや未来の乗り物、ロボットなどが登場する。その中でも、革新的だったのがナイキのエア マグ オリジナルモデル。映画のワンシーンで、マーティが2015年に合う服装に着替えるシーンで、未来の靴を着用すると靴ひもが自動で調整され驚くというシーンが登場する。世界中で愛される映画ファッションとして有名になり、ナイキは2016年に映画と同じ靴ひも自動調整機能が搭載されたレプリカモデルを発売。“未来の靴”を30年近い歳月をかけ現実のものにし、映画ファンだけでなくスニーカーファンも驚かせた。
AIR MAG
ナイキ/エア マグ
「ゲット・ダウン」
70年代のニューヨークを舞台にヒップホップの黎明期を描いたネットフリックオリジナルドラマ。ニューヨークのブロンクスで、主人公ジークがDJシャオリンとともにゲットダウンブラザーズを結成し音楽に明け暮れるなかで、当時のヒップホップファッションが忠実に描かれている。特に監督の強いこだわりから、スニーカーはマニアが見て納得できるものをということで、実際のモデルを撮影に使用。作中では、ダンスやMCバトルシーンでゲットダウンブラザーズがプーマのスウェードを履いているシーンも登場する。スニーカーは80年代にはランDMCといったグループがファッションに取り入れたことで、一躍ヒップホップファッションの代名詞になった。
SUEDE
プーマ/スウェード
『 スタンド・バイ・ミー』
1950年代のアメリカ北西部の田舎町を舞台に4人の少年たちが好奇心から列車に轢かれた死体探しの旅に出る、ひと夏の冒険を描いた名作。家庭環境での問題や、コンプレックスなど、それぞれ悩み葛藤しつつも仲間たちに支えられ旅の中で絆を深めていく。作中で少年たちが着用しているのがコンバースのオールスター。映画で起用されるファッションアイテムの中で登場回数が多いと言われており、長年愛されている。当時若者の間で憧れの的だったオールスターは、素朴でシンプルなフォルムが飾らない少年たちの等身大の姿を映し出す。線路を並んで歩くノスタルジックなシーンではスニーカーがいい味を出している。
ALL STAR
コンバース/オールスター
文/藤村実里 Photo by Aflo