公害問題をテーマに誕生した怪獣・ヘドラが、なぜソフビ界で人気を誇るのか。ソフビのプロとアーティストという異なる視点からその魔力について徹底討論!
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左: アーティスト/TOMASONさん 幼少よりオリジナルモンスターを描き続けるアーティスト。表参道のギャラリー「MAT」のディレクターでもある。最近では、自身のキャラクターをもとに制作したカードゲームを携え、アメリカでポップアップを開催。 右: |
公害怪獣・ヘドラとは…?
1971年公開『ゴジラ対ヘドラ』に登場。人間の経済活動による工場排煙や廃液から起こる公害の具現化であり、当時の社会問題を色濃く反映した稀有な存在。オタマジャクシのような水中期を経て、上陸期、飛行期と多段階に進化するのも特徴だ。独特のヌメり感や有機的なフォルム、怪奇さと愛嬌が同居するデザインは今もコアな人気を集めている。のちに『ゴジラ FINAL WARS』( 2004 )にも登場し、その異様な存在感を改めて示した。

子ども向けじゃない!?
異質な怪獣映画。
藤田哲平(以下、F):ヘドラはゴジラシリーズの怪獣の中でも特に異質な存在。『ゴジラ対ヘドラ』では〝公害〟というセンシティブなテーマにも触れ、政治的なメッセージも前面に出ていた。でも残念なことに当時の子どもたちにはまったく人気がなくて……(笑)。
TOMASON(以下、T):なんとなくわかる気がしますね(笑)。当時の子どもなら、ストレートにゴジラやキングギドラに興味がいっちゃう。『ゴジラ対ヘドラ』も前衛的というか、急にアニメーションに切り替わる演出とか、子どもが楽しめるのかなって……。今はその異質さが逆にすごく鮮烈。
F:そうそう。子どもの人気がなくても社会派の大人には刺さっていた。だけど1970年代のソフビ市場は子どもが支えていたから、当時はまったく評価されなかった。
T:時間を置いてから再評価される作品、キャラクターってありますよね。アートや音楽と同じで、時代が追いついたのかなと。
再評価は2000年代。
ニッチな怪獣が有名に!
F:ヘドラが盛り上がり始めたのは2000年代。マーミットやブルマァク、CCPが当時発売されていた商品のようなレトロタイプを新しく作った。それを見た大人が「この造型はやばい」と気づいてどんどん広まっていったはず。
T:その時期からアートとトイが急接近して、コレクションという文脈が出てきましたよね。ソフビを評価する大人がぐっと増えた。
F:今では、ヘドラはソフビ界でゴジラと並ぶ大人気の怪獣。むしろバリエーション数ならゴジラ以上かも。メーカーごとに解釈を変えながら次々と増えていくし、ファンからの注目度も常に高い。
T:僕のまわりでもソフビを語る場では必ず名前が出る怪獣ですね。
F:おもしろいのは子どもからの人気がほぼゼロだった怪獣が、大人の支持で頂点にまで上り詰めたってこと。これってソフビ文化のおもしろさそのものなんですよね。

男子のDNAに刺さる
多段階の形態変化!
T:そもそもなぜここまでヘドラがフィーチャーされるんですか?
F:ゴジラってカラバリがあってもそこまで造型はいじれない。一方ヘドラはどんなにデザインを崩してもヘドラとして成立してしまう。あのドロドロとしたフォルムだからこそ、造型の自由度が比較的高い。派手な配色でも成立するし、メーカーごとにまったく違う表情が出る。だから自ずとコレクション性も高くなっていく。
T:確かに。ひとつ買ったら、あれもこれも欲しくなる魅力がある。あとは名前もキャッチーですよね。〝ヘドロ〟から来ているのが一発でわかるし、誰でも覚えやすい。
F:さらに形態変化もある。水中・陸上・空中と次々に形態を変える〝お得感〟というか、その変貌していく様子に我ら男子はアガってしまう(笑)。形態ごとにソフビの表現も広がるし、本当に遊びが尽きない怪獣なんですよね。
T:モンスターを描いている僕の立場からしても、どれだけ造型で遊んでもちゃんと〝ヘドラ〟に見えるってすごいことだと思います。自由に解釈できるのに、しっかりアイデンティティが残る怪獣って、実はめったにないんですよ。劇中の鋭い眼光が、ソフビになっても生きているのもいいんだよなぁ〜。
目の力、名前の響き。
ファンが育てたのがヘドラ!
T:僕はキャラづくりをするとき、見た目・名前・ストーリーの三角形を意識する。ヘドラはその中でも〝見た目〟が突き抜けていて、それが信者を生んでいるんですよ。名前のキャッチーさもあってカルト的に人気が広まりましたね。
F:ニッチなキャラだったのに、コア層が熱を持って広めたことでメジャーに押し上げられた。おもちゃが芸術として認知され始めた時代と重なったのも大きいですね。
T:公害というテーマも従来の怪獣文脈を壊していて、すごく新鮮だった。期待を裏切られるたびに、その驚きが記憶に残る。
F:彩色の幅も魅力だと思う。ゴジラはカラフルにすると違和感があるけど、ヘドラは派手であればあるほど映えるし、カッコいい。だからメーカーも思い切れるし、並べると圧倒的な迫力に。
T:僕もオリジナルのモンスターを描くとき、広く浅く人気が出るキャラより、誰か一人が強烈に推すキャラの方がカルチャーを動かす力を持つと思っていて。ヘドラはその究極。最初はニッチでも、熱狂的なファンがカルチャー全体を揺さぶったってことですから。
F:だから公式イベントも組まれるし、ヘドラ50周年の盛り上がりもすごかった。主役と並ぶほどの存在感になったのは、ファンとアーティストとメーカーが三位一体で育ててきたからでしょうね。

ゴジラと並ぶ二大巨頭。
ヘドラは怪獣ソフビの象徴。
F:今やソフビ界におけるヘドラは、ゴジラと双璧をなす存在。初めて買うソフビとしても、かなりの支持を得ています。
T:僕にとっても〝愛されるクリーチャー〟の究極型ですね。見た目・名前・ストーリーが三角形を描いて、その一角が突き抜けたことでここまで広まったと思う。
F:唯一無二の造型と自由度で、ソフビの奥深さを体現している。大人になって初めてそのよさがわかるキャラだからこそ、長く愛され続けるんだと思いますよ。
T:そうですね。ゴジラと並んでファンの中では〝二大巨頭〟と呼ばれるようになったのも納得できる。これからもきっと、新しい表現を受け止めて進化していくはず。

鮮烈なデビューを経て
ソフビとして大出世!
全身がどろりと歪み、異様な空気をまとったヘドラの姿は従来の怪獣像を覆した。鋭い眼光は生々しく、禍々しさと不気味なユーモアを放つ独特の存在感。劇中で披露されたヘドラらしさを、いかにソフビで表現するのか。その自由度の高さが人気の秘密かもしれない。
初めてのヘドラを
迎え入れるなら?
メーカーごとに異なる金型や彩色、さらにはどの形態を選ぶかによって、選択肢は無限に広がる。だからこそ最初の1体を選ぶときは、実物を見て触れて、理想のヘドラを探すべし!

photo : Norito Ohazama edit & text : Kanta Hisajima












