ライダーだけでなく乗らない人もスカッとするバイク映画5選!

『モーターサイクル・ダイアリーズ』
製作年/2004年 監督/ウォルター・サレス 脚本/ホセ・リベーラ 出演/ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ミア・マエストロ
 
その旅を通じて若き青年はゲバラとなる!
のちの人生で革命家チェ・ゲバラと呼ばれることになる若き医大生エルネストが、相棒と共にバイクにまたがり、自身の生き方を決定づける南米大陸縦断の旅に出るーーー。荒れた道が続く中、両側いっぱいに荷物をぶら下げた『怪力号』(ノートン500)が白い煙を吐き出しながらマイペースに進み、事あるごとに車体が横倒しになって彼ら二人を勢いよく路上へ投げ出す様が、旅のはじまりを賑やかに彩る。

かくも序盤はコミカルにはじまりつつ、しかし名匠ウォルター・サレスはほんの何気ない瞬間に、ゲバラの人生を突き動かす人、土地、情景をナチュラルに描きこむことを忘れない。目の前に横たわる大きな河を見つめながらゲバラは何を思うのか。世の中の不平等をなくし、目の前の病んだ人々、虐げられた人々の暮らしや人生を救いたいという気持ちは、革命家としての彼の紛れもない第一歩になった。その哲学や精神の形成過程を垣間見ることができる。まさに『エピソード1』的なロードムービーだ。


『イージー・ライダー』
製作年/1969年 監督・脚本・出演/デニス・ホッパー 脚本・出演/ピーター・フォンダ 出演/テリー・サザーン、ジャック・ニコルソン、アントニア・メンドーザ
 
いつまでも鮮烈であり続けるバイク映画の金字塔!
アメリカン・ニューシネマの代表作であると同時に、制作から実に55年が経った今もなお、一向に古びることなく刺激的であり続けるインディーズ映画の傑作。麻薬取引で大金を手にしたヒッピーの二人、ビリー(デニス・ホッパー)&ワイアット(ピーター・フォンダ)は愛車のハーレーにまたがって荒野を貫く一本道を走り続ける。それは彼らにとって自由気ままなバイク旅。しかし道すがら立ち寄った町々は思いのほか閉鎖的で、ヒッピー然とした彼らを目の敵になにがなんでも排除しようとする。それは価値観が入り乱れた60年代末のアメリカが持つもう一つの素顔でもあった……。

同じハーレーでもフォンダが乗るのはチョッパー。ホッパーの愛車とはフロントフォークやハンドルの高さが異なり、そんな二人の織りなすシルエットが『Born to be Wild』に乗せて画面を横切っていく様は痺れるほどカッコいい。そこに留置所で知り合った若き弁護士(ジャック・ニコルソン)が加わると、交わされるセリフから奥深いアメリカの精神性や表情が見えてくる。そしてあのラストーーー。何度見直しても胸のざわめきが抑えられなくなる一本である。


『ミッション:インポッシブル2』
製作年/2000年 監督/ジョン・ウー 脚本/ロバート・タウン 出演/トム・クルーズ、ダグレイ・スコット、タンディ・ニュートン
 
流麗なダンスのようにバイクが舞う!
パリ五輪の閉会式で颯爽と頭上から舞い降り、大会フラッグを受け取るやバイクで会場を飛び出したトム・クルーズ。『ミッション:インポッシブル』はそんな彼のバイク愛が幾度となく刻まれてきたシリーズだが、中でも『2』はジョン・ウー監督ならではの、流麗なダンスのような、はたまた西部劇の“一騎討ち”をも思わせる印象的なバイク・アクションが炸裂する一作となった。

極秘開発された人を死に至らしめるウイルスとそのワクチンを巡って、イーサン・ハントと悪に寝返ったエージェントがバトルを繰り広げ……。近年のテンション高密度のシリーズ最新作からすると、この時期のアクション、ラヴ、サスペンスの紡ぎ方はややゆったりで、逆に新鮮に思えるほど。しかし、いざスイッチが入ると鳩は羽ばたき、二丁拳銃が飛び出し、さらに『フェイス/オフ』的な顔面入れ替えもありで、すっかりジョン・ウー祭り。ちなみにバイク場面は脚本執筆に先んじて構想されていたそうで、前輪で急停止&方向転換したり、銃撃を避けて片方の車体に隠れながら自足で地面を滑走するなど、豊穣なアクションボキャブラリーが光るシークエンスに仕上がっている。


『ゴーストライダー』
製作年/2007年 監督/マーク・スティーヴン・ジョンソン 脚本/マーク・スティーヴン・ジョンソン 出演/ニコラス・ケイジ、エヴァ・メンデス、ウェス・ベントリー、ピーター・フォンダ
 
意外なこだわりが嬉しいヒーロー爆走映画!
我らのニコラス・ケイジが炎に包まれたドクロのマーベル・ヒーロー“ゴーストライダー”になって、破格のテンションで周囲のあらゆるものを蹴散らし爆走を続ける。相変わらずケイジはこの手の役柄を本当に楽しそうに演じるから、見ている方も無性に楽しい……などと、すっかりニック目線。ヒーロー目線で鑑賞していると、なんと主人公と悪魔の契約を交わすメフィスト役としてピーター・フォンダが現れてビックリ! これはある意味、『イージー・ライダー』の魂をしっかり受け継いだバイク映画でもあるのだ。

「バイク映画といえば彼しかいない!」とフォンダの起用を提案したのは他ならぬケイジだったそうで、この映画界のレジェンドはキャスティングから撮影までごく短期間だったにもかかわらず、遥々オーストラリアまで駆けつけてくれたとか。また、若いスタッフには『イージー・ライダー』を未見の者も多く、それならばと、フォンダの解説つき上映会を実施して盛り上がったという逸話も聞こえてくるほど。本作でケイジが乗るバイクが『イージー・ライダー』でフォンダが乗っていたチョッパースタイルのハーレーなのも見逃せない。


『ポリス・ストーリー3』
製作年/1992年 監督/スタンリー・トン 脚本/エドワード・タン、フィレー・マー、リー・ウェイ・イー 出演/ジャッキー・チェン、ミシェル・キング、マギー・チャン
 
アクション魂みなぎるジャンプに気を呑む!
アジアを拠点とした麻薬密売組織の実態を探るべく潜入捜査を託されたジャッキーが、中国公安部のヤン(ミシェル・ヨー)と兄妹を偽って組織の中枢へ近寄っていき……。これまでジャッキーが監督してきたこの人気シリーズだが、第3作目ではこの先、何作もコラボレーションすることになる俊英スタンリー・トンを抜擢。その上、ミシェル・キングと名乗っていた時代のミシェル・ヨーがヒロイン以上の“共闘者”として卓越したアクション魂を披露している点に注目したい。

なかでも、マレーシアの市街地からクルマ、ヘリ、列車と繋いでいくアクションのつるべ打ちはハリウッドで到底真似できないほどのクオリティで、あのタランティーノがお気に入りの一作に掲げているほどだとか。そして運命の瞬間、おもむろにバイクにまたがったミシェルが列車と併走し、大ジャンプ!! そのまま走行中の列車の屋根に難着陸するというクレイジーなシーンを彼女自らカラダを張って演じているから驚きだ。今やオスカー女優となった彼女の原点と心意気が詰まった最高の一作である。


※Safari Onlineの転載記事です。オリジナル記事はこちらから。
safarilounge.jp/online/culture/detail.php?id=16346&p=6

文/牛津厚信 photo by AFLO

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