オーディオストリーミングサービスSpotifyが、例年、年末に公開する「Spotifyまとめ」。
2023年によく聴いた曲を集めた自分だけのプレイリスト「My Top Songs 2023」では、この1年でどんな音楽を聴いたか、振り返ることができる。
Fine Onlineではアーティストや編集者、サーファー、モデルなど、各業界のキーパーソンにSpotifyまとめから今年1年を振り返ってもらった。
第8回目は、アーティスト・クボタカイが登場。
文学性の高い歌詞と儚く繊細な歌声、楽曲提供でも注目を集める新鋭シンガーソングライター・ラッパー、クボタカイ。今年2ndアルバム『返事はいらない』をリリースし、シンガーソングライターとして、ラッパーとして、さらに注目を集めている
ライヴに楽曲制作に、毎日精力的に活動している彼は2023年、どんな音楽を聴き、どんな日々を過ごしていたのだろうか。
クボタカイ
宮崎県出身の 1999 年生まれ。シンガーソングライター / ラッパー。2017 年よりフリースタイルラップ、楽曲制作を開始。Hip-Hop、R&B、Rock から Pops まで幅広い音楽と文学の香りを感じさせる歌詞、そして切なく儚い歌声で注目を集める。YouTubeやTikTok等でも人気となり、同世代アーティストとのコラボレーションや提供楽曲が次々とスマッシュヒットするなど、各方面での活躍を見せている。2023年、2ndアルバム『返事はいらない』をリリースした。
トップアーティスト
Spotifyのまとめをみると、今年は落ち着いた曲を聴いたなという印象の一年でしたね。
もともと僕は宮崎出身で、海をはじめ自然に囲まれた生活をしてきたのですが、今年上京してきたことや、2年半ぶりにアルバムをリリースしたのも相まって、環境が大きく変わった1年だったんですよね。アルバムの制作では家で曲作りをすることも多く、必然的に家にいる時間も長かったので、癒やされたり、リラックスするときに聴くアーティストが上位にランクインしています。
アーティストの方でも、トップソングでもランクインしているLaura day romanceさんは、草原にいるような爽やかさや柔らかさがあるアーティストで、でもサビでグッと掴まれるようなポップなメロディが印象的です。その塩梅がすごくよくて、家にいるときにかなり聴いていましたね。特にアルバム『roman candles』は何回も、何百回も繰り返し流していたので、トップに入ってくるのも頷けます。
別野加奈さんはピアニストでもあり、ボーカルもしている方で、19歳ぐらいのときからずっと聴いているアーティストさんです。シンプルな旋律ですが、心が真っ平らになるような、そして、寒い時期の海にいるような、そんな感覚になるんですよね。昔から聴いているアーティストさんなので、いろんな思い出ともリンクして、ジーンと来ることもあって。
シーンとしては眠りにつく前をはじめとして、心を一旦静かにしたいときや、疲れた心を回復したいときによく聴いていますね。
haruka nakamuraさんは、ピアノもありつつ、よりアンビエントなアーティストさんで、夜も聴いていましたが、どちらかというと朝に聴くことが多かったですね。イメージとしてはぽかぽかした春の森のようで、ぬくもりがあって、「よし、これから作業するか」という感じで、そっと背中を押してくれるんですよね。
3組とも落ち着きを求めて聴いている音楽ですが、それぞれ曲を聴くシーンやイメージする風景が違うのが今改めてみると面白いなと思います。
トップソング
曲単位でみると、印象的だったのが、C.O.S.A.さんの『Mikiura feat. KID FRESINO』です。これはC.O.S.A.がさんが一番に愛する海、三重県尾鷲市三木浦町を舞台に綴った未来へのメッセージソングで、やはりこの曲を聴くと、僕も海のことを思い出すんですよね。
潮風を感じるといいますか、この曲を聴くと、生まれ育った宮崎県、そしていつも行っていた地元の海の記憶が蘇ってくるんです。海ってやっぱり自分の中で特別なものですし、都会にいても、この曲を聴くことで、海に想いを馳せるようなそんな感覚になれる曲です。
2023年は上京して、アルバムも制作できて、充実した1年だったと思います。特に上京してから、フットワーク軽く、弾き語りライヴをしたり、スタッフさんと密にコミュニケーションを取ったりして、ライヴや制作との距離がグッと近くなった年でした。ただ、なかなか忙しくて外に行けないときも多かったので、来年はいつもの自分のようにアウトドアな生活をしたいですね。例えば、自然が溢れる場所に楽曲制作の合宿に行って、焚き火の揺れる火をみながら、ギターを弾いたり、それにヒップホップを合わせたりして、いい曲ができたらいいなと思います。
スタジオに籠もって作るのもいいですが、自分が楽しんで作っているマインドが大事だと思っているので、少し環境を変えたりして、ワクワクしながら今後も楽曲を作っていきたいと思います。
写真/オノデラカズオ(f-me) 文/高山 諒