気取りがなく、凛とした空気が心地いい。 背筋が〝スッと〟伸びる店へ。【Part3】

1度訪れると、2度3度と訪れたくなる店ってありませんか? その中でも背筋がスッと正されるような店に注目する企画。最終回となる今回は、巣鴨にあるラーメン店と、銀座にあるBARをご紹介。近くに行くことがあったら、ぜひ入店してみることをおすすめする優良店だ!

 

その麺仕事に
心が引き締まる

すべてのスープの味見を欠かさない。
麺創庵砂田

このカウンターで看板メニューの特製ワンタン麺を注文すると、否応なしに店主の砂田裕史さんの丁寧な仕事が目に入るはずだ。小鍋でスープを温め、3種のチャーシューはバットに広げて茹で釡の上へ。味玉は茹で釡のテボで温める。丼に自家製鶏油とタレを合わせ、麺を茹で……(中略)。丼にスープを注ぎ、湯切りした麺を入れる。ここで砂田さんは提供する中華そばすべてのスープの味を自らの舌で確かめる。「チャーシューダレの濃度はチャーシューの肉質によって変わるし、スープも計量しているけどバランスは微妙に変わるので……」

微妙な差異さえ見逃すまいとする細やかな仕事ぶり。しかし実は全仕事量はこの2倍以上だ。毎朝入店するのは朝4時30分。開店する8時までの間にスープを仕込み、チャーシューを焼き、麺を切る直前の麺帯にまで伸ばしておく。15時の営業後は麺切りにメンマの塩抜きに……と、気づけば退店時間は21時30分。今では近隣に部屋まで借りてしまったという。姿勢を正して最後の一口をすする。丼を上げ、盆を拭いて店を出る。誠実な仕事が凝縮されたこの1杯は心が豊かに引き締まる。

 

炭火で吊るし焼きにした自家製窯焼きチャーシューは3種類。豚肉の純なる味わいが印象的なうちももに、チャーシュー麺用肩ロース、特製のみに加わる鶏チャーシュー

 

全部入りの特製ワンタン麺には幅広麺も加わる。スープのベースは名古屋コーチン。水やナルトまでも厳選

 

背筋が伸びるPoint
1日あたり100杯以上味見する!

お話を聞いたのは……

店主
砂田裕史さん

 

【Shop Information】
麺創庵砂田

住:東京都豊島区巣鴨4-24-6 富士ビル
営:8:00~15:00 ※スープ・麺切れ次第終了
休:月・木曜、その他不定休はXにて告知
X:@mensouan_sunada
特製ワンタン麺1600 円、特製中華そば1400 円ほか、裏中華そばなど、朝限定で提供する麺もある

 

 

 

 

粋な店主と常連客に
心洗われる。

断らない心意気と常連客の気遣い。
銀座ロックフィッシュ

氷なしのシュワッとおいしいハイボールが飲みたい! と銀座ロックフィッシュに電話をかける。電話口からは喧騒が聞こえ(いっぱいかな?)と思っても、声の主は「なんとかします」と言う。そして確かに行けばなんとかなる。「『断らない』と決めたんですよ。立ち席も多いし、いざとなれば炭酸のケースをテーブルに(笑)」以前は断っていた。しかしその様子を見て遠慮した客が「帰る」と言い出し、それを見た別の客も……という連鎖が起きたという。「流れを止めちゃいけない。来てすぐに入れなくても、スタンドだからそのころには帰る方もいるし、次の客が来るまで勘定を待つようなご常連もいますからね」

店はひとつのコミュニティだ。コロナ禍では店主も客も、自分の居場所がわからなくなった。立場は違えど、自分の場所は自分で守る。そんな店主の矜持と常連客の優しさが今を支えている。「前の店では混み過ぎて、お客様から『上手に飲ませろ!』って怒られたこともありますけど(笑)」居心地がいいから自然と足は向く。腰をかがめて店に入り、すっと背筋を伸ばす。今日もまずは1杯、上手に飲ませていただいた。

 

店主は著書も多数あるつまみ作りの大家。全国のゆかりがある珍味をベースに自由な発想でつまみを組み立てる。人気の定番はオイルサーディーン(竹中)やスコッチエッグ各1300円

 

定番のハイボールはチャームもついて1600円。ノンアルコールの「あのハイボール」も

 

背筋が伸びるPoint
断らない心意気と常連の気遣い!

お話を聞いたのは……

店主
間口一就さん

 

【Shop Information】
銀座ロックフィッシュ

住:東京都中央区銀座7-3-13 ニューギンザビル1号館 7F
☎︎:03-5537-6900
営:15:00~22:00L.O(土曜14:00~ 17:30 )
休:日曜・祝日
Insta:@rockfish.ginza
店で出てくるつまみは、缶詰つまみにチーズ&バター、サンドイッチも多数で食べ応えあり


photo : Tomoo Shoju(BOIL)、Kouki Marueki(BOIL) edit & text : Tatsuya Matsuura

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