CATCH THE WAVE 〜人生の波に乗る!〜 人物列伝 FILE#2

海が好きな我々と切っても切り離せないのが海のゴミ問題。そんな海洋ゴミを和包丁という日本文化を用いて再利用する取り組みを行なっている企業に話を聞いてみた。我々にも何かできることがないのか考えるいいキッカケになりそうだ

 

お話を聞いたのは…

TAIMATSU
王威漢 さん

住:東京都台東区駒形1-3-8 ベッコアメ浅草ビル8F
☎︎:03-6824-5991
営:10:00~18:00
休:無休

 

伝統を守りながら革新へ。
日本文化を世界に発進!

海のゴミが和包丁に……。大胆な発想が伝統を守る新たな道を切り開いた。台湾出身の王威漢さんが、2024年に創業したTAIMATSUでは、海洋プラスチックを再利用して和包丁の柄にするというチャレンジに成功。「伝統を守りながら新しい価値を加え、日本の文化を世界に広めたい」と語るこの試みは、海外を中心に支持を集めている。
「海に浮かぶプラスチックには、醤油差しやペットボトルのキャップなどさまざまな素材があり、融点も異なる。どう融合し、丈夫で美しい柄として形成するか、何度も試行錯誤を重ねて……。大変でした(笑)」

王さんが日本に移り住んだのは2010年。それ以来、東京・台東区で暮らしてきた。「伝統文化の雰囲気が漂うこの街が心地よくて……」と微笑む。下町と言われるこのエリアには職人が集まり、古きよき技術と文化が今も息づく。その環境が和包丁をはじめとした日本の伝統を守り広める挑戦を決意させた。「もともと使命感を持って何かに尽くすという武士道の精神にひかれていました。一時は軍隊に入ることを考えたほど」。その一途な姿勢は、新たな挑戦を続けるための原動力に。現在、多くの和包丁の柄には海外産の木材が使われている。「日本の伝統を受け継ぐ和包丁には日本のいい素材を使いたい」との想いから、その一環として国産のヒノキを使用した柄の開発にも取り組む。「ヒノキを使うことで持ち心地が格段によくなりますし、さらに漆を塗ることで強度も増す」。しかし課題も少なくない。「和包丁の中子は職人が一つ一つ手打ちするため、形がすべて異なる。そのため、中子の形に合うように柄を調整しなくてはいけません」。また、漆を塗る前にヒノキを十分に乾燥させる必要があり、生産数が限られることも悩み。「でも、決して無理だとは思わず、一歩ずつでも前進し続けたい」と意気込む。

「とにかく日本の伝統文化が好きなんですよ。だからこそ、職人さんたちには何かを還元したい。たとえ知名度が低くても積極的に仕事をお願いし、世に出る機会を作ること、それが自分の役割ですね」。ただ商品を売るだけではなく、その背景にある職人の想いや価値観を伝える。「これこそ自分のやるべきこと。人生をかけて続けていきたい」。その言葉には伝統を未来へと繋ごうとする使命感であふれていた。

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