レコード愛を貫くコレクターの部屋【パート1】。

いつでもどこでも手軽に音楽を聴ける便利な時代。しかし、スペースとお金を使ってでもレコードにこだわる人たちもいる。そこにはきっとレコードでしか味わえない魅力があるに違いない。ということでコレクターたちにその魅力について聞いてみた。

 

たまたま買った1枚から
ブルース歌謡や演歌ブルースの沼に。

『ザ・東京のひとり暮らし』な部屋に、約2000枚を所有する入岡さん。決して集める感覚はなく、聴きたい!と思う盤を買っていたら、いつの間にかこの量に……とのこと。「買い始めたのは中学生のころ。ヒットチャートに挙がるCDも買っていたけど、当時は安かった中古レコードをよく漁っていました。山下達郎の『フォー・ユー』なんて当時は100円でしたよ。それがいまや5000円以上しますからね……」

 

ターンテーブルはテクニクスを愛用しているという

 

主宰するバンドは、’80sポップスをゆる〜くアップデートさせたような心地いい曲調が魅力。それに影響したであろうコレクションはLP盤が大半を占めるが、入岡さんが夢中になっているのは7インチ盤だ。それもブルース歌謡や演歌ブルースを中心に爆買いしているという。「沖縄でたまたま買った城 明の1枚を聞いてからハマっちゃって。どの人も味のあるいい声で、歌がとにかくうまい。ボサノヴァやレゲエのように、ブルース歌謡にもちゃんと型があるんですよ。それに何より安く楽しめるのがいい」

 

その流れから北島三郎にも熱中になったという。しかも、レコードだけでなくアパレルなどのグッズも収めているのだ。「誰もが知る大御所の演歌歌手なのに、当時ヒットしなかった曲は盤が全然出てこない。いつかはサブちゃんをはじめ、ブルース歌謡についてまとめた本を出せたらいいな〜。なんて考えています。でもまぁ、需要はないかもですけど……(笑)」

 

7インチ専用収納は、60~70年代のブルース歌謡でいっぱい。自主盤も多く、大半は500円以下で購入したという
「肩書はサブちゃんコレクターで」というほど熱中する、北島三郎の7インチレコード

 

マイベストはこの1枚!

『ル・エキュム・ドゥ・ジュール-日々の泡-』
長谷川孝水

リリースは1983年。和製アンビエント・ポップの隠れた名盤として、ここ数年国内外で評価が高まり、再発されたことでも話題に。「曲調ははかなげで、人懐っこい声もいい。どんなときに聴いてもしっくりくるし、自分を肯定してくれる感じがする」



話を聞いたのは……
入岡佑樹さん
会社員・ミュージシャン

1987年生まれ。アウトドア系企業に勤める傍ら、自ら主宰するニュー・ウェイヴバンド、スーパーVHSの活動にも精力的。

 


photo : Hiroki Nakayama(IL NIDO.STUDIO)、Tomoo Shoju(BOIL)、Yuya Yoshimoto  text : Shuhei Sato  edit&text : Yuta Yagi

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